[アニメ レビュー] 愛してナイト 第1話 坊やと猫とキザな奴

愛してナイト

 娯楽作品というものはその時代の文化や空気を反映するものだ。特に恋愛作品となるとファッションや理想など、”いま”の空気を反映していることが大衆に指示される重要なポイントになる。

 80年代初頭には少女漫画を原作とする作品がどんどんアニメ化された。「愛してナイト」もそのなかのひとつで、新しい時代を感じさせる作品だった。OPの曲やアニメーションを観ればその”新しさ”が分かってもらえると思う。

 当時は男が髪を染めているなんて珍しかった。チャラチャラした軟派な男が肯定され始めたのもこの頃だ。そのあたりも含め、時代の変わる瞬間の空気に浸ってほしい作品だ。

※本記事は2023年12月9日時点での視聴をもとにした記事です。


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第1話 坊やと猫とキザな奴

 第1話の長さは25分05秒(1505秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です

<登場人物>

三田村 八重子(みたむら やえこ)
父親とお好み焼き屋まんぼうを営む明るく優しい少女。特に目立つタイプではないが男性にはモテる。親しい間柄では「やっこ」と呼ばれている。
加藤 剛(かとう ごう)
弟の橋蔵とふたりで暮らす大学生。大学とバンドの活動で忙しい。所属バンド「ビーハイヴ」ではボーカルを担当している。
加藤 橋蔵(かとう はしぞう)
兄の剛と暮らしているが、未就学の年齢なのでいつもお留守番をしている。華やかな楽しそうな隣の街に強い興味を持っている。
ジュリアーノ
剛の飼っているネコ。橋蔵とは仲良しでいつも一緒にいる。少し肥満気味で態度もふてぶてしいが、そこがまたかわいい。
大川 里美(おおかわ さとみ)
やっこ目当てにまんぼうに通っている長髪の美少年。剛とは幼馴染で、所属する「ビーハイヴ」ではキーボードを担当している。


第1話 坊やと猫とキザな奴

 ロマンチックな夢を見ていたのにジュリアーノのおかげで現実に引き戻される橋蔵。一緒に暮らす剛は大学にバンドと忙しく、ちょっとさみしい生活を送っている。楽しそうな隣の町へ出かけたいと思っていた橋蔵はジュリアーノにそそのかされ、剛との約束をやぶって隣の街へ行ってしまうのだった。

 隣の街はにぎやかで楽しかったが、歩き回ったおかげでお腹が空いてしまった橋蔵。しかしジュリアーノを連れていてはどのお店でも追い出されてしまう。いっぽうお好み焼き屋まんぼうでは、ポニーテールの少女と美形の男性との恋の予感が……。

 雨が降りだし街を転々とする橋蔵たち。たまたま通りがかった八重子に声をかけられた橋蔵は、ジュリアーノと一緒にお好み焼き屋まんぼうへと向かった。お父ちゃんには渋い顔をされたが、八重子に橋蔵たちの事情を聞き大歓迎してくれた。

 やっことお父ちゃんの優しさに触れ大満足の橋蔵。そしてついにやっこと剛の運命の出会い!

 第1話の見どころ

  • 新しい時代のラブストーリー
  • 人情にあつい八重子とお父ちゃん
  • 運命の出会い

背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。



起 (90秒 + 225秒)

0-10
ロゴ 10秒


10-1:30
OP:「恋は突然」堀江美都子 80秒


1:30-2:30
ぶみー 60秒

2:30-3:00
歌詞が思い浮かばない 30秒

3:00-4:00
橋蔵は剛と二人暮らし 60秒

4:00-4:35
隣の街へ行きたい橋蔵 35秒

4:35-5:15
橋蔵をそそのかすジュリアーノ 40秒


 剛と橋蔵とジュリアーノのパート。

承 (295秒)

5:15-6:10
ふたりの大冒険 55秒

6:10-6:35
ふてぶてしいジュリアーノ 25秒

6:35-7:10
追い出されるふたり 35秒

7:10-7:50
ネコの絵が描いてあるのに 40秒

7:50-8:30
どうにも上手くいかない 40秒

8:30-9:00
いきなり恋の予感 30秒

9:00-9:35
君に会えてうれしかったよ 35秒

9:35-10:10
そそっかしいのはお父ちゃん譲り 35秒


 街をさまよう腹ペコなふたりのパート。

転 (350秒)

10:10-10:50
雨の街をさまようふたり 40秒

10:50-11:30
八重子と橋蔵の出会い 40秒

11:30-12:00
ふたりを招く八重子 30秒

12:00-12:40
やっぱり抜けてるやっこ 40秒

12:40-13:00
剛のバンド練習 20秒

13:00-13:20
グッと痺れさせてくれるいいコ 20秒

13:20-14:00
ネコはだめだめ 40秒

14:00-14:40
橋蔵が気になる剛 40秒

14:40-16:00
お父ちゃんの扱いが上手いやっこ 80秒


 橋蔵たちとまんぼうの出会いのパート。

結 (435秒 + 110秒)

16:00-17:00
日本一のお好み焼き 60秒

17:00-18:00
ジュリアーノと仲良くなるお父ちゃん 60秒

18:00-18:45
大人気の剛 45秒

18:45-19:25
なかなかおませな橋蔵 40秒

19:25-19:55
突然の星占いゲーム販促(ハーピット) 30秒

19:55-21:05
きたあああああ 70秒

21:05-21:30
口を滑らせちゃう橋蔵 25秒

21:30-22:00
ピリッとこたえたぜ 30秒

22:00-22:30
たくさんの出会い 30秒

22:30-23:15
はやく明日が来ないかなぁ 45秒


23:15-24:35
ED:「ぼくのジュリアーノ」平塚たかあき 80秒


24:35-25:05
次回予告 30秒


 恋の始まりのパート。

シーンリプレイ

10-1:30
OP:「恋は突然」堀江美都子 80秒

 アイドルソング的な名曲。曲もさることながら、アニメーションの80年代感も相当なもの。最新のアニメ技術とポニーテールの”揺れ”がいい!


14:40-16:00
お父ちゃんの扱いが上手いやっこ 80秒

 こういった人情に弱いオヤジキャラに重みがあるのも、厳しさの反面に優しさがあるから。暴力的なものが排除された現代では、このタイプのキャラクターはどうしても軽くなってしまう。


19:55-21:05
きたあああああ 70秒

 衝撃的な剛とやっこの出会い。剛と里美が親友でバンド仲間であることを、やっこはまだ知らない。三角関係不可避の出会いなのだ。


感想

 新しい文化の始まりである80年代を象徴するような作品だ。OPの美しさと八重子のデザインのかわいさ。剛や里美のカラフルでポップなヘアスタイル。前時代的なヤンキーのお父ちゃんとは一線を画している。

 恋にゆれる剛たちの華々しさと、チャラチャラした男を認めないお父ちゃん。この構図はまさに”80年代vs70年代”もしくは”若者vsおじさん”あるいは”軟派vs硬派”と言えるだろう。

 新旧の文化の対立を描いているが、どちらかを一方的に肯定しているわけではない。恋愛やバンドといった華やかな面と、お父ちゃんに厳しくも人情深い人間性。この入り混じった感じが日本の文化が変わりつつあった80年代初期の空気を思い出させてくれる。

 出会い頭にぶつかる→なんか失礼なことをする→ビンタする→しびれるの流れの美しさはもはや芸術、まさに出会いのテンプレートのてんこ盛り。飛び散る花びらもてんこ盛りだ。この頃から、あるいはもっと以前から「おもしれー女」構文は我々に刷り込まれていたのだ。なんとも感慨深い話である。

 作画やアニメーションは私が記憶していたよりもはるかに良くできていて、OPやEDで観られる髪や体の”揺れ”はかわいらしく美しい。当時は嫌いだったジュリアーノも、今となってはふてぶてしくてかわいらしく思える。

 この作品からただよう時代が切り替わる瞬間の、文化が入り混じった感じがなんとも愛おしい。昔の作品に触れると大衆文化や物事の常識の変化が感じられて面白い。ポリコレと表現の自由がせめぎ合う2023年現在の状況も、数十年後には笑い話になっているのかも知れない。

 なお劇中でやっこが橋蔵に渡していたゲームは「ハーピット」という占いができるゲームウォッチで実際に販売されていた。アニメ内で意図的に販促をするというのも新しかった時代である。

 あと橋蔵の最後のセリフ「はやく明日が来ないかなぁ」に心がえぐられたのは私だけではあるまい。もう何十年もそんなこと思ったことがない。つくづくいい時代だったのだなぁと感じるシーンだ。