「MOTHER」をSwitchで遊んだ

かつての名作「MOTHER」を今こそ楽しもう

 「MOTHER」は1989年にファミコンで発売されたRPGである。1989年というとドラゴンクエストがⅢまで発売されており、ファイナルファンタジーはⅡまで発売されているという状況で、ファミコンのトレンドはアクションゲームからRPGへ……という時代である。

 当時の私も友人から「MOTHER」を借りてプレイしたのだが、ドラクエやFFとは違ったビジュアルやシステムに馴染めずすぐに返してしまった。それが今回Switchで遊べるということで、30年ぶりくらいにリベンジしようと思ったわけである。

 しかし当時のシステムのまま遊ぶのはさすがに今の時代には厳しい。そんなにプレイ時間もとれない。そこで今だからこそできるSwitchでのお手軽プレイスタイルを提案したい。といっても特別な方法があるわけではない。攻略サイトと「どこでもセーブ機能(もしくは巻き戻し機能)」を使ってプレイするだけだ。発売当時の苦労をしてクリアしたい方にはおすすめしない。

 多少のズルをしたとしても「MOTHER」のいい所を壊さずにクリアまで楽しめるはずなので、「MOTHER」に興味のあった方はぜひ挑戦してみてほしい。私はこのスタイルで実際に30年越しのクリアをしたので、クリアできるのは保証つきだ。ちなみに主人公のクリアレベルはLV.32だった。

ストーリー

 1900年のはじめごろ、主人公「ぼく」のひいじいちゃん(ジョージ)とひいばあちゃん(マリア)は行方不明になった。それから2年ほどしてジョージだけがひょっこりと帰ってきた。人々の心配をよそに、ジョージは多くを語らず何かの研究に夢中になっていたという。マリアはというと、ついに帰ってくることはなかった……というのが前置きである。

 そして冒険の物語は1988年に舞台を移し、プレイヤーである主人公「ぼく」の部屋からゲームが始まるのだ。「ぼく」の部屋では電気スタンドが襲いかかってくる。それが最初の戦闘である。それからあれやこれやしてマイホームから出発するまでが、物語と操作のチュートリアルになっているといったところだ。

「MOTHER」をプレイするにあたってモデルになった背景を知っておくとより楽しめると思う。特に昭和の時代を知らない若い方は「E.T.」「グーニーズ」「スタンド・バイ・ミー」あたりの映画を観ておくと、当時の少たちが憧れた80年代アメリカの空気がつかめると思うので、プレイにもより感情移入ができるだろう。

マップや操作性について

 キャラクターの操作はファミコンのように十字キーで移動するのがおすすめだ。主人公は上下左右だけでなく斜めにも移動できるので、左スティックでプレイすると誤爆が頻発する。十字キーで操作したほうがストレス無くプレイできると思う。キャラクターのキーレスポンスが少し鈍く、出だしの一歩が遅く感じるのはどうしようもないのであきらめよう。

 室内やダンジョン内のマップはMOTHER的ともいえる独特な奥行きが表現された画面になっている。これがまた壁に引っかかりやすく、左スティックで操作する場合の誤爆と相まってプレイヤーの集中を削ってくる。またダンジョン内は基本的には横カメラの2D画面なので、後半のダンジョンでルートの分岐が増えてくると、ダンジョンの全体像が把握できずに迷子になりやすい。複雑そうなダンジョンに入ったら素直に攻略サイトのマップをみて攻略しよう。

 屋外のフィールドマップで特徴的なのは、街や村がアイコンで表示されていて入ると画面が切り替わるドラクエのような方式ではなく、フィールドにそのまま街が構築されているオープンワールドになっている点だ。そのため街の全体が広く視界は狭く感じるし、建物が多いので少し混乱するかもしれない。しかし入れる建物は見て分かるようになっているし、基本的に街の中では敵は出現しないのでゆっくり街や村の雰囲気を感じてみよう。

入れる、入れない

 MOTHERのフィールドマップはドラクエ等に比べると周囲の見える範囲が狭い。説明不足もあり画面から得られる情報が少ないので、序盤はいきなり放り出された気持ちになる。攻略のための道はつけられているが、早々にどこへ行くべきなのか分からなくなって不安になることもあるだろう。ゲームを進めるためには思い切って道を外れることも重要なのだ。それこそが「MOTHER」を特別なゲームにしている面もあるので、勇気を持って道を外れてみよう。

フィールド画面の違い

 ただこのフィールドを「ゼルダの伝説 BREATH OF THE WILD」のような3Dマップで表現したら、とても魅力的な世界になるのではないだろうか。1980年代の技術で作ったから2Dで作るしかなかっただけで、MOTHERのマップはオープンワールドの発想で作られているのだから、高低差も表現できる3Dとは相性がいいと思うのだけど、どうだろう。

お金とセーブについて

 セーブは家にある黒電話や店の中に設置されている公衆電話からパパに電話することでセーブができる。なお、公衆電話を使う場合はお金を払う(1ドル)テレホンカードを使用しなくてはいけない。(80年代には街のそこかしこに公衆電話が設置されており、お金かテレホンカードを入れると電話ができた)

 買い物や公衆電話に使うお金は主に戦闘で勝利することによって獲得できる。しかし一般的なRPGのように直接キャラクターの財布に入るのではなく、主人公の銀行口座に振り込まれるというかたちになっている。なので、デパートなどにあるキャッシュディスペンサーで口座から引き出しておかないとお金が使えないというシステムになっている。一見すると面倒くさいシステムに思えるかもしれないが、戦闘に負けて全滅すると持ち金は半分になってしまうが口座にあるお金は減らないという利点がある。

MOTHERのマネーサイクル

 Switchにおいてのプレイでは、どこでもセーブ機能(Lボタン+ZRボタン同時押し)が利用できる。適度な頻度でセーブをすることですぐにやり直しができる。セーブスロットは4っつあるので、フィールド用やダンジョン用もしくはイベント前と後など、うまく使い分けてやり繰りしよう。また、すぐ直前に戻りたいときは、どこでもセーブよりも巻き戻し機能(ZLボタン+ZRボタン同時長押し)のほうが便利だろう。

戦闘と回復について

 この時代には珍しく、戦闘で「オート」が選べるようになっている。中盤あたりまではオートだけで戦う脳筋プレイでも大丈夫だが、後半になるにつれて敵も強くなり、考えて戦ったほうが効率的な場面も増える。終盤にいたっては強敵が多すぎて逃げるほうがいいまである。終盤にはレベル上げに最適なタイミングがあるので、嫌な敵に出会ったらためらわず逃げてもいいと思う。

オート戦闘が選べる

 戦闘に負けると最後にセーブした場所へ戻される。主人公は復活する(HPは満タンだがPPはゼロの状態)が仲間は気絶したままなので治療が必要になる。仲間を復活させるのはちょっと面倒なので、仲間がいるならなるべく全滅は避けたほうがいい。逆に仲間がひとりもいない状態の序盤は、ガンガン戦って全滅と復活を繰り返したほうが楽に経験値やお金を稼げて効率がいいと思う。常にマイホームでセーブしていれば、すぐにママが料理で全回復してくれる。

 しばらく遊んでいると分かるのだが、この作品では敵とのエンカウントが頻繁に起こる。強敵に出会って負けてしまいそうなら、選択肢を選び直したり逃げるを選んだりしてなんとか負けないように持っていこう。

プレイヤーの数だけ物語がある

 Switchのどこでもセーブ機能を活用すれば快適プレイでクリアまで遊べるだろう。これに攻略サイトを併用すれば鬼に金棒である。といっても、終盤の敵は半端ない強さ(いやらしさ)なのでそれでも苦労するとは思うが。

 こんな遊び方をして本当に「MOTHER」を楽しんだことになるのだろうかと心配する向きもあるだろう。プレイ中の苦労やリトライがゲーム体験の重要な要素であることも確かなのだ。しかし大丈夫だ、問題ない。「MOTHER」のプレイ体験はこれくらいで失われるものではない。

「MOTHER」はファミコンのゲームなのでプレイ中の説明が不足に感じることが多い。おおよその場所しか分からない全体マップ。どこを歩いているのか見失って歩き回ることになるフィールド。次にどこに行けば(自由です)イベントが発生するのか不明。掴みどころのないストーリー。不安要素ばかりだ。

 しかし遊んでいるうちにゲーム中にある”空白”がプレイヤーのストーリーを書き込む”余白”として機能し始める。マップをあてもなくさまよっている最中やモブキャラの何気ないセリフに、ふいに自分の体験が蘇ってきたりするのだ。それは山で遊んだ思い出だったり、友達と観た映画の風景だったり、中二病を患っていた頃の妄想だったり。私は線路を終点まで歩いてみるというプレイが特に刺さるものがあった。そうやって”空白”を埋めていったゲームプレイの先に、自分だけの「MOTHER」体験が積み上がってゆく。

 そしてその体験はエンディングをむかえることで、名曲ポリアンナを始めとするBGMのメロディと共に、そのプレイヤーだけの物語として心に刻まれる。私は久しぶりに生活の中で無意識にゲームのBGMを口ずさむという行為をしていたことに気づいた。メロディが主体のファミコンBGMあるあるだ。やっぱりファミコンはいいな。そう思った。

 ただ、ノスタルジーが無ければ「MOTHER」を楽しめないというわけではないという事は強調しておきたい。ゲーム中に散りばめられたイベントやセリフはそのままで十分に楽しいものだ。率直に子供の頃にクリアしておけばよかったなと思う。そうすれば今の自分との感想の違いが楽しめたのに。

「MOTHER2」はグラフィックもシステムも「MOTHER」よりも格段に進化した遊びやすいゲームだが、「MOTHER」でしか味わえない体験は確かにあって、言葉では表せない価値があると私は思う。興味があった方はこれを機会にプレイすることをおすすめする。操作やシステムに多少は戸惑うこともあるだろうが、きっと「大人も子供も、おねーさんも。」楽しめるはずだ。

もし自分が作るなら…

 いちおうこのブログは「ゲーム作りたい」ブログなので、いつかの参考のために自分ならこうするってことを書き留めておく。あとから自分で読むためのコーナーだ。

「MOTHER」の不満点は「MOTHER2」でほぼ完璧に潰されている。フィールドマップがエリア方式になっており迷いようのないマップになっている。迷わなくなって遊びやすくはなったものの「MOTHER」にあった独特の魅力は一部失われてしまった。ただオープンワールドが当たり前の現在では、本来の魅力はそのままにかつ遊びやすくできるのでは?と思う。

  • 絵本のような世界観を3Dで表現
  • マップに高低をつける
  • 木の密集地も歩ける
  • 音楽はあえて当時のままで
  • 戦闘はやっぱりコマンド方式で
  • 釣りや虫集め等の収集要素
  • 昼夜の概念
  • ワープの仕様はそのままで
  • 持ち運びできる自転車で移動スピードを調整できるように
  • 電子マネーで決済

あたりだろうか?