[アニメ レビュー] 無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 第2話 「師匠」
無職転生 ~異世界行ったら本気だす~
「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」は2012年9月から2015年4月まで連載されていたオンライン小説とのこと。昨今ではジャンルとして確立されている異世界転生ものの先駆的作品なんだそうだ。〇〇したら本気出すという言い回しがなんか懐かしい。
第1話では無職で引きこもりの主人公が異世界へ転生し赤ん坊として生を受けた。成長した主人公は魔術の才能があると母親のゼニスに見込まれて魔術の家庭教師ロキシーと出会う。あらためて魔術の才能を自分でも確信した主人公はこの転生した世界で新しい人生を歩んでゆくことを決めたのである。
風景や人物は美しく描かれとても魅力的な世界が広がっている。とりわけ魔術に関しては動きの美しさも加味されている。主人公のモノローグはシリアスもおちゃらけもエロも、演者が巧みに声色を使い分けて物語の世界へ私たちを誘ってくれる。原作のファンでなくともアニメ好きのあなたには一見の価値アリの作品だ。
※本記事は2021年1月2日時点での視聴をもとにした記事です。
第2話 「師匠」
第2話の長さは23分41秒(1421秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です。
<登場人物>
ルーデウス・グレイラット
この物語の主人公。見かけはこども、中身は無職引きこもりの34歳日本人である。愛称はルディ。
パウロ・グレイラット
ルーデウスの父親。ブエナ村の駐在騎士。剣の達人。
ゼニス・グレイラット
ルーデウスの母親。治癒術士。ルーデウスの魔術の才能を伸ばすためにロキシーを家庭教師に雇った。
ロキシー・ミグルディア
ルーデウスの魔術の家庭教師。ちょっとドジっ娘。
起 (340秒)
0-16
葬式の場面 親族の席が一つ空いている 16秒
16-1:00
暗い部屋 親戚に追い出される汚い男 44秒
1:00-1:30
さまよう男 学生の危険を知らせたいが声が出ない 30秒
1:30-1:35
道路に飛び出す男 目が覚めるルーデウス 5秒
1:35-2:30
お盛んなパウロとゼニス 思わぬ収穫 55秒
2:30-2:50
ロキシーとの楽しい修行の日々 20秒
2:50-4:45
世界には多くの種族が住んでいる 恐ろしいスペルド族の話 115秒
4:45-5:40
前世でのエロゲスキル 女の子は褒められると嬉しい 55秒
承 (228秒)
5:40-6:25
一年後 魔術のスキルが向上 剣術はまだまだ 45秒
6:25-6:45
ロキシーの雨の魔法 遊んでいる近所の子供 20秒
6:45-7:05
前世でのイジメの記憶 拭いきれないトラウマ 20秒
7:05-7:30
豊かなブエナ村 草も生えないロキシーの故郷 25秒
7:30-8:30
赤竜山脈を超えた先 ラノア魔法大学 60秒
8:30-8:43
魔法大学を勧めるロキシー 外が怖いルーデウス 13秒
8:43-9:28
ルーデウスに対するロキシーの劣等感 45秒
魔法の描写にはこだわりがあるようで、かっこよく美しく描かれる。ルーデウスの「まだまだこれからだ。がんばろう」という前向きなセリフは主人公が充実した生活をしている証拠。村人のために降らせたロキシーの雨と主人公のイジメのフラッシュバック。雨音からのフラッシュバックとロキシーの救いとも受け取れる呼びかけ。豊かな村の風景に背を向けるときの主人公の”間”に、拭えない”外への恐怖”が描かれている。一方でロキシーが見せるルーデウスへの劣等感にも、ここでは描かれない事情があることを感じさせる。承では、どんどん上達してゆくルーデウスの魔術と変わらない主人公のトラウマ。底しれぬルーデウスの才能に劣等感をふくらませるロキシー。ふたりの心の機微を描いている。
転 (392秒)
9:28-10:15
さらに半年後 5歳の誕生日 47秒
10:15-11:00
パウロから剣のプレゼント 剣術の説教 45秒
11:00-11:20 ゼ
ニスから本のプレゼント 大喜びのルーデウス 20秒
11:20-12:00
ロキシーから杖のプレゼント 師匠呼びに引っかかるロキシー 40秒
12:00-12:30
告げられる卒業試験 30秒
12:30-13:00
すごい力に目覚めても美少女の居候がいても 消えない絶望 30秒
13:00-13:22
勇気を出せ 頑張れ でも体は動かなかった 22秒
13:22-14:00
どうしても外に出るのが怖い 58秒
14:00-14:30
馬に乗せてもらう フラッシュバック 30秒
14:30-15:00
見られるのが怖い こっちを見るな 30秒
15:00-16:00
村の人々に慕われるロキシー ロキシーを受け入れた村 60秒
この世界では初めての誕生会。プレゼントを貰うシーンで、剣を渡し説教を聞かせるパウロ、ルーデウスの好きな本を渡すゼニス。普段の生活でのルーデウスとの距離感が推察されて面白い。そして身近でルーデウスの魔術を見てきたロキシーは”師匠”という呼びかけに引け目を感じながらルーデウスの頭をなで、卒業試験のときがきたことを告げる。がんばろうとしても自分を救えなかった主人公。「大丈夫ですよ。私が付いていますから、安心してください」だれも言ってくれなかった魔法の言葉をかけてくれたロキシー。おびえる主人公が感じた村人の視線はロキシーに対する笑顔であった。転では、主人公の物語を前世からずっと止めていたトラウマをロキシーが無意識にやすやすと乗り越えさせてくれ、新しい人生のスタートを予感させてくれる。
結 (366秒 + 95秒)
16:00-16:38
水聖級魔術のコピー それが卒業試験 38秒
16:38-17:28
すごい威力の魔法 カラヴァッジョに直撃 50秒
17:28-17:48
カラヴァッジョ大丈夫そう 今度はルーデウスの番 20秒
17:48-18:00
師匠の杖を取り出すルーデウス 12秒
18:00-18:45
ロキシーとの別れの予感 思いっきり魔術を使うルーデウス 45秒
18:45-19:20
ロキシーにはもう教えることがない 35秒
19:20-19:40
水聖級魔術師の称号 20秒
19:40-20:50
ロキシーとの別れ 卒業祝いのお守り 70秒
20:50-21:20
ロキシーの後ろ姿にお礼を言う 30秒
21:20-21:55
外に出る勇気をくれたロキシー 35秒
21:55-22:06
盗んだパンツ ごめんなさい 11秒
22:06-23:36
エンディングテーマ 90秒
23:36-23:41
次回予告 5秒
キュムロニンバスの凄まじい描写。カラヴァッジョに誤爆のシーンはドジっ娘感出ててよい。ロキシーとの別れを感じつつも手を抜かずキュムロニンバスを使う主人公。成長した自分の力を思う存分示すことがロキシーへの恩返しだと分かっている。もう立派な男の子(おっさん)である。最後の別れ。ルーデウスの頭を撫でることができないロキシー。お守りを渡した「そうしてもらえると嬉しいです」の後の”間”にはどんな思いが込められているのだろう。いろいろな想像ができて面白い。人ひとりの人生を壊してしまったトラウマ。両親も誰も自分ですらも救えなかったトラウマ。転生しても逃れられなかったトラウマ。”外に出る”だたそれだけができなかった主人公を外に出してくれたひとりの少女。そんな少女に尊敬の念を込めて彼は呼びかける。「師匠」と。パンツ理解。結では、トラウマを解消し外へ出ることができた主人公が師匠との別れをいとわず卒業試験をクリアし、師匠との楽しい生活を終わらせ新たな”外”への一歩を踏み出すパートとなっている。
感想
異世界ものはいろいろ観てきたが無職転生の主人公は一味違った。冒頭での両親らしき人物の葬式の最中にエロ動画でオナニーをしているシーン。誰もが彼をクズニートだと認識するだろう。親戚に家を追い出されさまよった先でリア充を助けようとするもニートだから声帯が動かないので声が出ない。結局彼はトラックにはねられて異世界へ飛ばされてしまう。
ここで少し引っかかる。ただのクズニートなら他人のしかも学生のリア充なんぞ理由もなく「死ね」と思っているはずなのだ。学生たちに声をかけようとするデブニートは純粋なる善意で行動していた。これは先の葬式のシーンから受ける印象とはギャップが生じる。そう、これは彼がなりたくてクズニートになった訳ではないことを示唆しているのだ。
物語が進んでいく中で生前の主人公がひどいイジメによって引きこもりになったことが明かされる。なんとかしようとしても恐怖で体が動けない外へ出られない。それでも両親は無責任に”頑張れ”と彼を追い詰める。ついに彼は自分の部屋以外の逃げ場所を無くしてしまう。イジメから引きこもる過程がリアルで心が痛い。両親の葬式に出なかったのは彼にとって両親が”敵”として認識されていたからなのではないか。
ルーデウスとして誕生日を祝ってもらう彼は「こんな感覚わすれてたけど、意外といいもんだな」と語る。引きこもる前は両親といっしょに幸せな時間を過ごしていたのだ。彼の経験したイジメがいかに彼の人生を狂わせたのかを考えると悲しい気持ちになる。そしてそのトラウマは転生しても変わらない。恵まれた初期ステータスを得ようと美少女と同居しようと、”外”への恐怖は消えなかったのだ。
では主人公は引きこもってから何も成長もせずただぶくぶく太っていたのだろうか?いや、違う。偶然にも彼を”外”へと一緒に連れ出してくれたロキシーとの卒業試験のシーン。彼はワザと失敗して居心地の良い場所でロキシーと修行を続けることもできた。でも彼は自分を”外”へ連れ出してくれたロキシーの前で強大な魔術を使ってみせた。彼女と別れて前に進むことを選んでみせたのである。
作画や魔術の表現もすごいが、キャラクターへの演技の付け方や間のとり方も丁寧だ。ちゃんと画面の中にキャラクターが心を持って動いている。キャラが立つとはこういうことか。ルーデウスが時おり見せる”エロおやじ感”には親近感を覚えるし、ロキシーは言うまでもなく魅力的だ。
とにかく手をぬている部分が見当たらなくて最終話までこれが続けられるのか心配になる。全編にわたって原作へのリスペクトを感じるのは私の思い過ごしではないと思う。私もアニメ版スタッフに敬意を込めてひとこと…やっぱり好きな娘のパンツは欲しいよね!
ロキシー師匠のスピンオフ作品もあります↓
前世のお葬式の場面。ゴミだらけの部屋を追い出された主人公は学生の男女を助けようとしてトラックにはねられる。普段から喋らないのでうまく発声できない。リア充らしき学生を助けようとしたところをみると、クズニートだけど根は優しいのかもしれない。エロネタは即物的でちょっと”きもちわるい”使われ方をしている。主人公の前世由来のクズニート感が出ていて効果的。座学ではこの世界のなりたちと種族を教えてくれる。詳しく説明されるスペルド族は以後のストーリーの伏線か?起では、前世での場面では主人公の前世での立場や環境を見せている。現在(転生後)の場面では転生した世界の説明。また、リアルなおっさんのエロ目線を描くことでルーデウスの中身が前世と変わっていないことを強調している。