[アニメ レビュー] イジらないで、長瀞さん 第11話 センパイはどう思ってんスか?/素直じゃないんだからー、センパイはー♡

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イジらないで、長瀞さん

「イジらないで、長瀞さん」は、美術部のおとなしいセンパイを後輩の長瀞がイジる恋愛アニメである。原作は漫画。

 センパイは教室の隅っこでずっと絵を描いているようなキャラクターで、一方の長瀞さんは勉強はもう一つだが陽キャで運動神経は抜群で美少女。そんな2人が魅せる恋愛ドラマはちょっと刺激的だ。

 あまり抵抗できないセンパイを一方的に攻める長瀞さん。ほとんどイジメに近いアプローチなのだが、はじめは迷惑していたセンパイも次第に長瀞さんが気になってくる。

 物語はセンパイの視点を中心に描かれるので、視聴者もセンパイと同じように長瀞さんを好きになってゆくだろう。特にMの方には響くものがあるかもしれない。同時に長瀞さんの”本当の気持ち”が所々に垣間見えて非常にかわいらしい。

 多少の性的な描写はあるにせよ、ここぞという場面では思春期の男女の想いを丁寧に描いて表現している。設定の過激さとは裏腹に、まっとうな恋愛アニメなのだ。

※本記事は2021年6月27日時点での視聴をもとにした記事です。

第11話 センパイはどう思ってんスか?/素直じゃないんだからー、センパイはー♡

 第11話の長さは23分40秒(1420秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です

<登場人物>

八王子 直人(はちおうじ なおと)
本作の主人公。長瀞さんからは「センパイ」と呼ばれている。学校では美術部に所属している。いわゆる”陰キャ”である。

長瀞 早瀬(ながとろ はやせ)
いつもセンパイをイジって楽しんでいる本作のヒロイン。センパイからは「長瀞」と呼ばれている。黒髪ロングで褐色の美少女。

蒲生 まき(がもう まき)
長瀞さんの友達。「ガモちゃん」と呼ばれている。栗色ロングのドS系意地悪美少女。

ヨッシー
長瀞さんの友達。「ヨッシー」と呼ばれている。茶髪でツインテールの天然系美少女。

桜(さくら)
長瀞さんの友達。「さくら」と呼ばれている。金髪ゆるふわウェーブのボブ。腹黒美少女。

部長(ぶちょう)
美術部の部長。部室が長瀞たちのたまり場になっているのが許せない。才色兼備で黒髪ロングの美少女。

背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。

起 (90秒 + 290秒)

0-1:30
オープニングテーマ 90秒

1:30-2:00
部長のモノマネ バカにする長瀞たち 30秒

2:00-2:30
部長が気に入らない長瀞 ”俺ら” 30秒

2:30-3:55
部長は手強い 85秒

3:55-4:55
実力と展示 作戦勝ち 60秒

4:55-5:32
詰める長瀞 キョドるセンパイ 37秒

5:32-6:05
部長との差 33秒

6:05-6:20
部長との差 15秒


部長のモノマネけっこう似てる。ガチで才能のある部長。起では、太刀打ちできないほどの部長との実力の差が描かれている。

承 (378秒)

6:20-6:45
いじける長瀞 25秒

6:45-7:15
圧倒的なパワー不足 30秒

7:15-7:41
嬉しいセンパイの擁護 26秒

7:41-8:45
どうやって勝つのか 厳しい戦い 64秒

8:45-9:30
普段どおりで 45秒

9:30-9:40
私がセンパイを勝たせる 10秒 

9:40-10:07
水着でも 27秒

10:07-10:29
コスプレでも 22秒

10:29-11:00
天使でもダメ 31秒

11:00-11:35
負けたら廃部 35秒

11:35-12:00
ひとりで戦う 25秒

12:00-12:28
仲間はずれの長瀞 28秒

12:28-12:38
アイキャッチ×2 10秒


デカイだけがチカラではない。長瀞の魅力にすでに気づいているセンパイ。部長とセンパイの間に入れない長瀞。承では、センパイを助けたい長瀞とひとりでの勝負を選んだセンパイとのすれ違いが起こる。

転 (232秒)

12:38-13:13
ダメもとで 35秒

13:13-13:40
とにかく描く 27秒

13:40-14:20
作品に必要なものとは 40秒

14:20-15:00
愛が足りない 見られてしまった 40秒

15:00-15:25
芸術とは”追いかける”こと 25秒

15:25-15:45
追いついた 20秒

15:45-15:55
嬉しくてたまらない表情 10秒

15:55-16:30
キモキモストーカー 逃げる長瀞 35秒


上手いだけではダメなことを部長は知っている。芸術とは”追いかける”を続けること。センパイは長瀞を”追いかける”と決めた。転では、センパイが自分に必要なものが何なのか部長が教えてくれる。

結 (247秒 + 183秒)

16:30-17:01
長瀞との出会い 31秒

17:01-17:09
下駄箱 8秒

17:09-17:33
繋がって得たもの 24秒

17:33-17:45
グラウンドを横切る長瀞 12秒

17:45-18:12
ふたりだけの思い出 27秒

18:12-18:30
プールにて 18秒

18:30-18:50
センパイがたどり着いた結論 20秒

18:50-19:10
素直になれない長瀞 20秒

19:10-19:30
センパイかっこいい 20秒

19:30-20:05
嬉しいくせに 35秒

20:05-20:37
最高の笑顔 32秒


20:37-21:58
エンディングテーマ 81秒


21:58-23:05
センパイ調子に乗りすぎ 67秒

23:05-23:25
部長と風紀委員 20秒

23:25-23:40
次回予告 15秒

 これまで長瀞がくれた思い出。すねてイジワルする長瀞がかわいい。センパイといるときに見せる長瀞の笑顔。結では、センパイが長瀞に素直な気持ちをぶつけて、ふたりの距離がグッと縮まる。

シーンリプレイ

15:45-15:55
嬉しくてたまらない表情 10秒

20:05-20:37
最高の笑顔 32秒

どちらも”嬉しい”を表現した場面。どちらも長瀞の内面がよく表現されていてかわいらしい。


感想

 物語が始まったばかりのセンパイは一方的に長瀞にイジられて泣いているだけだった。センパイが次第に長瀞に気持ちを向けるようになったのは、長瀞が悪意を持ってイジっていた訳ではなかったからである。

 視聴者である私たちにとっては長瀞とセンパイが両想いなのは明白だが、その想いを上手く伝えられないもどかしさを楽しむアニメなのだ。しかし部長という強大な敵を前にしてふたりは思い知らされる。お互いがなくてはならない存在になりつつあることを。

 文化祭での部長との勝負の為にひとりで描いたセンパイの絵を観た部長は、ひと目でこの絵はダメだと言い放つ。対象に対する”愛”が足りないと言うのだ。そしてセンパイに長瀞を追いかけるように促す。

 ”芸術とは追いかけること”だと部長は言った。芸術作品とは理想を追いかける過程でこぼれ落ちる汗のようなものだ。完成した次の瞬間から作者はもう次の目標へ向かって進んでいる。芸術家にとって作品とは生まれ落ちてすぐに過去の遺物になっていく運命なのだ。

 これまでは長瀞が追いかけてきてくれたことで”ふたりの思い出”が生まれた。センパイはひとりでカンバスに向かうことによってそれを自ら捨ててしまった。だから”つまらない絵”を描いてしまったのだ。長瀞を追いかけながらセンパイは気づく。長瀞と自分が求め合う気持ちこそが”愛”であり、それこそがふたりでしか完成させることができない芸術なのだと。

 そして部長は自分に足りないのもまた”愛”であると自覚している。ヌード絵の横に立つなどというパフォーマンスは、ひとえに”愛”を欲したからだろう。いくら技術や名声や美貌を持っていようと、センパイと長瀞のような”愛”はひとりでは手に入れられないことを知っているのだ。

 おそらく部長はセンパイに自分を負かしてほしいのだと思う。そしてセンパイに自信を持って美術部を引き継いでほしいのだ。ここまでお膳立てされて負けるとは思わないが、長瀞をしっかりと捕まえたセンパイがどんな作品を描きあげるのか楽しみである。