[アニメ レビュー] 宇宙船サジタリウス 第1話 消えた美人教授を追え!
宇宙船サジタリウス
1980年代のアニメは既に”テレビまんが”から脱却し、アニメとして日本独自のコンテンツとして進化しつつあった。当時の技術や流行を拾いながら比較的自由な発展をしていたと思う。
そこには”萌え”の原点ともいえる美少女キャラクターも、現実の女性とは違った魅力を持った存在としてアニメに登場していた。現在に通ずるオタク文化が育っていった時代だったのだと思う。
そんななか異色のアニメが突如として放映された作品があった。それが「宇宙船サジタリウス」だ。物語の舞台は近未来の地球でありながら、主人公は動物をモチーフとしたおっさんたち。明らかに日本的でないキャラクターデザイン。おまけに関西弁キャラまで。
誰がこんなの観るんだよ……と思いながらも観るのがやめられない。なんだかんだで友達もみんな観てたという不思議なアニメだ。どんなのか覚えていない奴も「ラザーニア!」と言えば「あぁwなんか覚えてる」と答えるだろう。いつの時代も面白さは正義なのである。
※本記事は2024年3月10日時点での視聴をもとにした記事です。
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第1話 消えた美人教授を追え!
第1話の長さは24分50秒(1490秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です。
<登場人物>
- トッピー
- 宇宙輸送の中小企業である宇宙便利舎の社員でサジタリウス号のメインパイロット。犬がモチーフのキャラクター。出産間近の妻がいる。
- ラナ
- トッピーの同僚のパイロットでカエルがモチーフのキャラクター。関西弁で家族想い。
- ジラフ
- キリンがモチーフのキャラクター。宇宙考古学の研究員。先輩のアン教授を追いかけている。
第1話 消えた美人教授を追え!
<ストーリーの流れ>
⇩
それぞれの家庭に帰るトッピーとラナ
⇩
ラナとジラフの喧嘩と、サジタリウス号と隕石の衝突
⇩
みんなで協力してサジタリウス号を修理して仲直り
※背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。
起 (300秒)
しがない零細企業の宇宙便利舎。パイロットは隊長のトッピーと関西弁のラナ。ひと仕事を終えて地球に帰ってきたふたりは空港でアンという女性をジラフという男から助ける。ここでメインキャストが出揃う。短い時間のなかで、中小企業の悲哀や主人公たちの立場などが簡潔に描かれている。大企業の社員に横柄な態度であしらわれるトッピーとラナの気持ち、大人になった今ならより解像度が高く受け取れるはずだ。
0-1:15
OP:「スターダストボーイズ」影山ヒロノブ/こおろぎ’73 75秒
1:15-2:30
大気圏突入 75秒
2:30-3:00
宇宙便利舎のサジタリウス号 30秒
3:00-4:00
大企業と零細企業の格差 60秒
4:00-5:00
逃げるアン教授と追いかけるジラフ 60秒
承 (290秒)
アン教授は旅立っていった。ジラフは無実の罪をきせられていたようだ。ここではラナの家族や好物や、トッピーの出産間近の妻ピートなど、それぞれのキャラクターの生活や背景が描かれている。ラナの尻に敷かれた感じやトッピーのおっちょこちょいな感じがよく伝わってきて、彼らへの親近感が刺激される。
5:00-5:50
アン教授は行ってしまった 50秒
5:50-6:30
我が家に帰ってきたラナ 40秒
6:30-7:10
妻のラザニアが食べたいラナ 40秒
7:10-8:15
トッピーの妻ピートは出産間近 65秒
8:15-9:30
早く出といでラザニアと赤ちゃん 75秒
9:30-9:50
社長からの急な呼び出し 20秒
転 (340秒)
それぞれの事情を抱え、ちぐはぐになってしまう3人。特にラナとジラフは衝突してしまう。追い打ちをかけるようにサジタリウス号と隕石が衝突してしまう。それぞれが自分のことに縛られ他人のことを尊重できなくなってしまう状態。宇宙だけでなく地球においてもその状況は危険だ。人は協力することでその力を発揮できる。
9:50-11:00
アン教授を連れ帰るために宇宙の果てへ 70秒
11:00-12:15
捜索の依頼主はジラフだった 75秒
12:15-13:30
ピートが心配でしょうがないトッピー 75秒
13:30-14:30
もっと真面目にやってほしいジラフ 60秒
14:30-15:00
衝突するラナとジラフ 30秒
15:00-15:30
隕石と衝突してしまうサジタリウス号 30秒
結 (460秒 + 100秒)
相手の話を聞いて、話し合って、協力して、みんなで挑戦をする。その結果3人は修理の成功とハッピーなニュース、そしてお互いに認めあって友情を手に入れた。第1話のストーリーの目的はトッピー・ラナとジラフの出会いを描くことだ。その出会いは最悪のものだったが、危機を乗り越えることで友達となることができた。この第1話をとおして、この作品が中小企業のおじさんたちのドタバタ劇だというコンセプトをきっちりと伝えている。
15:30-16:30
一回地球に帰るしかない 60秒
16:30-17:00
トッピーとラナはジラフのことを誤解していた 30秒
17:00-18:25
自分の学説を証明するためアン教授は旅立った 85秒
18:25-19:00
どうしてもアン教授を追いかけたいジラフ 35秒
19:00-20:00
ジラフを放ってはおけないふたり 60秒
20:00-21:00 綱渡りの船外作業 60秒
21:00-21:30 修理は大成功 30秒
21:30-22:00 トッピーの娘が無事に産まれた 30秒
22:00-23:10
謝って仲直りする3人 70秒
23:10-24:20
「夢光年」影山ヒロノブ 70秒
24:20-24:50 次回予告 30秒
シーンリプレイ
8:15-9:30
早く出といでラザニアと赤ちゃん 75秒
日本のアニメではあまりないミュージカル的な演出。あまり効果的だとは思わないが、当時のとすれば個性的で印象に残る演出だ。
19:00-20:00
ジラフを放ってはおけないふたり 60秒
トッピーの決断力も素晴らしいが、ラナのツンデレっぷりもいい。
22:00-23:10
謝って仲直りする3人 70秒
とても微笑ましいシーン。他人の幸せを喜び、お互いを尊重することの大切さ。そこからこの作品はスタートするのだ。
感想
大人になった今だからわかる中小企業の悲哀やおじさんたちの気持ち。人はそれぞれ自分の問題と向き合いながら社会と関わっている。本来はひとりでは解決できないことも多いのだが、おじさんはなかなか人には頼れないし、他人も同じように問題を抱えているだろうと遠慮して助けを求めない。
物語のなかでトッピーとラナは途中でジラフに向き合い、そして彼に協力することで事態は好転してゆく。ジラフも自分のアン教授への想いを素直に話すことでふたりの協力を得ることができた。
お互いを尊重し協力することで問題を解決することができるという教訓。これがこの作品のスタートであり真理だ。彼らはこれから様々な問題に直面するが、今回と同じように乗り越えていくのだ。
この作品の良さはストーリー以外にもあって、OPとEDの素晴らしさもそのひとつだ。どちらもアニソンレジェンド歌手の歌唱によるものだが、彼の他の名曲たちに負けない名曲だと思う。
私のお気に入りのキャラクターはラナで、彼のお決まりのセリフ「ラザーニア」は今でも大好きだ。当時はラザニアなんて料理は知らなくて、ラナがあれだけ言うのだからどんなに美味しい料理なのかとラザニアに思いを馳せたものだ。第1話を観返したことで分かったのだが、ラナが好きなのは”奥さんが作ったラザニア”なのだ。家族想いで愛妻家。やっぱり彼は今でも愛すべきキャラクターだと思う。
トッピーとラナがアンとジラフと出会う