[アニメ レビュー] 文豪ストレイドッグス 第39話 晝は夢、夜ぞ現

文豪ストレイドッグス

 私がミステリー作品に最初に没頭したのは小学生の頃で、多くの方と同じように図書室に並んだ江戸川乱歩シリーズがきっかけであった。今でも無性に乱歩が読みたくなり、本棚から引っ張り出すこともある。私にとって読書の楽しさを教えてくれたのは乱歩なのだ。

「文豪ストレイドッグス」は実在する文豪たちをモデルにしたキャラクターたちがヨコハマを舞台に活躍する作品だ。第38話からは福沢諭吉と江戸川乱歩をメインとしたストーリーが展開される。私も視聴するのは今期からなのだが、前知識ゼロでも十分に楽しめると感じた。

 孤高の剣士・福沢諭吉は警護にあたっていた社長の殺人事件に遭遇する。そこへ事務見習いの面接に来た少年が瞬く間に事件を解決してしまう。少年の名は江戸川乱歩。なぜか乱歩に懐かれた諭吉は、彼を伴って次の仕事先である世界劇場へと向かった。

 演者を狙った脅迫事件を防ぐため聞き取り調査を進める諭吉と乱歩。乱歩の推理能力の鋭さに気づいた諭吉は彼とともに事件に挑むことを選んだ。もう誰とも組まないと決めていた諭吉の心を動かした乱歩。そして舞台への扉はひらいた。

※本記事は2023年1月17日時点での視聴をもとにした記事です。


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[アニメ レビュー] 文豪ストレイドッグス 第39話 晝は夢、夜ぞ現

 第39話の長さは23分40秒(1420秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です

<登場人物>

福沢 諭吉(ふくざわ ゆきち)
剣の達人で政府の用心棒をしていたが、人を斬ることに魅入られることを恐れて引退した。偶然に出会った乱歩の才能を見抜いた。
江戸川 乱歩(えどがわ らんぽ)
人並み外れた推理力を持つ青年。子供っぽくて非常識。自分と周囲の認識のギャップを埋められずに苦悩している。


第39話 晝は夢、夜ぞ現

 観劇の途中で諭吉が周囲に気を配るなか、劇中の犯人を言い当ててしまい迷惑をかける乱歩。乱歩が自身の能力に気づいていないことを察した諭吉は、乱歩が自分と同じ異能力者であることを指摘した。そしてその能力をコントロールしなければ、乱歩自身を傷つけることにもなりかねないことを心配した。

 自分と世間を誤解している乱歩に気づきを与えるために乱歩にメガネを渡す諭吉。半信半疑であった乱歩だったが、諭吉に言われた通りに心を開いてメガネを受け入れた。そして乱歩は世界を受け入れ、最高の名探偵がここに誕生した。

 劇中の演出かと思われた天使の殺人は、実際に行われた殺人だった。すかさず乱歩の指示を実行した諭吉だったが、肝心の乱歩が見当たらない。乱歩を守らなければならなかったと後悔する諭吉。しかし乱歩はすべてを理解したうえで行動していた。

 颯爽と舞台に現れた乱歩は鮮やかに事件の真相を暴いてゆく。それは演技を突き詰めるあまりの犯行であった。一方で共犯の脚本家は殺され、乱歩は警官に連れ出されてしまった。事件の闇はまだまだ深い……。

 第39話の見どころ

  • 乱歩らしい世界観
  • 乱歩の覚醒
  • 二転三転する謎解き

背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。



起 (300秒)

0-1:00
天使による殺人 60秒

1:00-1:40
怪しげな紳士 40秒

1:40-2:00
礼儀知らずの乱歩 20秒

2:00-2:30
乱歩の孤独 30秒

2:30-3:00
能力の自覚の無い乱歩 30秒

3:00-3:45
諭吉のトラウマ 45秒

3:45-5:00
異能力の自覚 75秒


 諭吉が乱歩の孤独の原因を自覚させるパート。

承 (350秒)

5:00-5:30
真実を見抜く能力 30秒

5:30-6:30
特別なメガネ 60秒

6:30-7:30
あとは心を開くだけ 60秒

7:30-7:50
自分のせいではなかった 20秒

7:50-8:35
輝き出す世界 45秒

8:35-9:05
乱歩には見えている 30秒

9:05-9:17
最高の名探偵 12秒


9:17-10:50
OP:「TRUE STORY」SCREEN mode 93秒


 諭吉により乱歩に自信と自覚が芽生えるパート。

転 (270秒)

10:50-11:30
死の演出 40秒

11:30-12:00
天使の殺人 30秒

12:00-12:30
乱歩の指示 30秒

12:30-13:20
不審な人物 50秒

13:20-14:00
乱歩は守る必要があった 40秒

14:00-14:35
犯人は二人いる 35秒

14:35-15:20
謎は乱歩にしかわからない 45秒


 予告のあった犯行が行われてしまうパート。

結 (500秒)

15:20-16:00
天使は観客 40秒

16:00-16:30
被害者と加害者は逆 30秒

16:30-17:00
囚われた元加害者 30秒

17:00-17:30
主役は犯人だった 30秒

17:30-18:15
最初から気づいていた名探偵 45秒

18:15-19:00
演者として生きたかった 45秒

19:00-20:00
ただの独りよがりだった 60秒

20:00-20:40
名探偵・江戸川乱歩 40秒


20:40-22:31
ED:「しるし」ラックライフ 111秒


22:31-23:00
脚本家の目的 29秒

23:00-23:30
殺された脚本家 30秒

23:30-23:40
警官と乱歩 10秒


 乱歩の名推理で事件が解決。しかし真相は別のところにあったパート。




シーンリプレイ

7:50-8:35
輝き出す世界 45秒

 どんな形であれ自分に新しい気づきを与えてくれる人は貴重。乱歩にとっては諭吉が救いの天使だった。


13:20-14:00
乱歩は守る必要があった 40秒

 この不安がふたりを繋げた。放っておけない。保護欲。諭吉は素直に”守ってやらねば”と思ったのだろう。


23:30-23:40
警官と乱歩 10秒

 分かっていながら危険に首を突っ込む乱歩。先が思いやられるとはこのこと。諭吉の心労は続く。


感想

 第38話からほぼモノクロの画面で進めてきたストーリーは、諭吉が乱歩にメガネを利用したきっかけを与えることによって色が与えられる。自分の能力の活かし方を諭吉に教えられた乱歩は、自分と世界が初めて繋がったのだ。

 乱歩は水を得た魚のように事件の謎の隙間を泳ぎ回りつぎつぎに解決してゆく。最後の警官の罠も明らかに見破っている様子で、返した返事もどこか退屈そうに聞こえた。先が読めすぎて面白くなかったのだろうか。

 諭吉は乱歩が放っておけないようで、自由奔放に振る舞う乱歩に呆れながらも彼を守ろうと必死なのは微笑ましい。飛び抜けた頭脳があろうとも暴力を行使されてはひとたまりもない。この不安は諭吉の心に深く刻まれたようだ。

 事件は役者として観客の期待を超えようとした主役の独りよがりが原因であった。観客による期待を”天使”とすれば、天使に殺されたと表現できる。共犯と目された脚本家は”誰か”の変装で、そしてそれはたぶん乱歩を連れ去った警官なのだろう。被害者とされた謎の人物もその”誰か”なのかもしれない。

 舞台での大げさな謎解きや凄惨な事件は乱歩作品のテイストを感じさせてくれる。解決したかと思いきやのドンデン返しも明智探偵や二十面相でよく見た展開でワクワクする。先の展開にも期待ができそうだ。

 イケメンだより異能だよりではない、しっかりしたキャラクターとストーリーの魅力で視聴者をひきつける。さすが4期までアニメ化されているだけの作品である。