[アニメ レビュー] であいもん 第八話 くり回顧

であいもん

「であいもん」は、京都の和菓子屋『緑松』を舞台としたハートフルストーリーである。東京から実家である緑松に帰ってきた和と、居候の少女・一果を中心に物語が描かれる。

 和と一果だけでなく、ふたりを見守るサブキャラクターも個性が豊かで、様々な人間模様を楽しめる作品になっている。また、和菓子や季節のうつろい等を大切にしており、京都という文化の宝庫を上手く活用している。

 第八話では、和の元カノである佳乃子をメインに据えた話だ。”栗”をキーワードに、和と佳乃子の過去と止まった時が動き出す物語を描いている。

 京都という豊かな文化の息づく街で人々の想いが交差し重なってゆく。心温まるドラマから目が離せない。

※本記事は2022年6月11日時点での視聴をもとにした記事です。


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第八話 くり回顧

 第八話の長さは24分10秒(1450秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です

<登場人物>

納野 和(いりの なごむ)
東京での夢に見切りをつけ、実家である緑松を継ぐために京都に帰ってきた。和菓子に対しては思い入れが強い。
雪平 一果(ゆきひら いつか)
緑松に居候している少女。将来は緑松を継ぐつもりでいるので、和が帰ってきたのをよく思っていない。父親は行方不明で母親はフランスに住んでいる。
松風 佳乃子(まつかぜ かのこ)
和が東京でバンド活動をしていた頃に同棲していた彼女。京都旅行の途中に和と再会し、京都のお茶屋さんで働くようになった。


第八話 であいもん

 お茶屋の同僚から「なぜ京都へ来たのか」を聞かれた佳乃子は、かつての和との出会いと楽しい日々を思い返していた。

 酔いつぶれていた自分を助けてくれた和は、お礼をする間もなく去っていった。ふたりは再び出会い、一緒に暮らすようになった。和が自分を選んでくれるとたかを括っていた佳乃子は、京都の実家へ帰ってしまった和の選択に傷ついた。しかし京都で和と再会し、今いちど和のそばにいたいと考えるようになった。

 ハロウィンで栗ManJuの被り物を使うつもりだった和は、以前の運動会で使ってから見当たらないことに気づいた。その栗ManJuの被り物は和にとって東京での生活の大切な思い出でもあった。栗ManJuの被り物を懸命に探す和だったが、なかなか見つからず……。

 一方で佳乃子はかつてのバンドメンバーへ相談をしていた。そんなこんなで。みんなの協力で栗ManJuの被り物が京都へ集合することに。今回の件で過去の自分を見つめ直した佳乃子も、新しい夢へとあるき出した和に、ようやく向き合う覚悟ができたようだ。

 第八話の見どころ

  • なんだかんだみんなに愛されている和
  • バンドメンバーと和の絆
  • 再び動き出した和と佳乃子の時間

背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。



起 (300秒)

0-1:10
佳乃子の茶道教室 70秒

1:10-1:30
なぜ京都へ 20秒


1:30-3:00
OP:「菫」坂本真綾 90秒



3:00-3:30
杏由からのメッセージ 30秒

3:30-4:00
洋菓子が好きなの 30秒

4:00-4:15
期待しすぎた 15秒

4:15-4:45
酔っ払い 30秒

4:45-5:00
力尽きた 15秒


承 (300秒)

5:00-5:10
助け舟 10秒

5:10-5:50
覚えてたらでええよー 40秒

5:50-6:10
これは運命 20秒

6:10-6:40
栗まんじゅうです 30秒

6:40-7:40
甘い生活 60秒

7:40-8:10
自分を選んでくれると思っていた 30秒

8:10-8:40
和との約束は 30秒

8:40-9:00
そばにいたい 20秒

9:00-9:20
たぶんバレてます 20秒

9:20-10:00
今どきのイベント 40秒


転 (340秒)

10:00-10:40
変な格好するのは子供だけ 40秒

10:40-11:15
あの騒動の裏で 35秒

11:15-11:30
大切なもの 15秒

11:30-12:30
業者が持っていったかも 60秒

12:30-12:50
意気消沈 20秒

12:50-13:20
いろいろ詰まった大事なもの 30秒

13:20-14:00
バンド崩壊の危機 40秒

14:00-14:30
栗まんじゅうで仲直り 30秒

14:30-15:00
スペース栗まんじゅう 30秒

15:00-15:25
大切な思い出 25秒

15:25-15:40
新しい目標 15秒


結 (389秒 + 121秒)

15:40-16:20
杏由のお兄ちゃん 40秒

16:20-16:40
あっさり和 20秒

16:40-17:50 みんな感じてくれてた和の想い 70秒!

17:50-18:45
佳乃子はどうする 55秒

18:45-19:20
黒坊主 35秒

19:20-19:30
あったー 届いたー 10秒

19:30-20:25
ロマンあふれる栗 55秒

20:25-20:50
たいした怪我なくてよかった 25秒

20:50-21:30
みんな大切にしてた 40秒

21:30-21:55
ちゃんと和菓子も好き 25秒

21:55-22:09
おいしっ 14秒


22:09-23:39
ED:「ここにある約束」であいもん(ayaho+曽我淳一) 90秒


ここにある約束

23:39-23:50
絶対返せよ!! 11秒

23:50-24:10
次回予告 20秒


シーンリプレイ

15:25-15:40
新しい目標 15秒

 ひとつの夢に真剣にぶつかっていたからこそ、次の夢にも迷わず向かっていける。


21:30-21:55
ちゃんと和菓子も好き 25秒

 この回りくどい言い方がよい。”ちゃんと”が付くことで”和菓子も好き”の解釈が味わい深いものに感じられる。


23:39-23:50
絶対返せよ!! 11秒

 バンドメンバーたちが和を今でもしたっていることが分かると同時に、彼らにとってもバンド時代が愛すべき思い出になっていることがうかがえるメッセージ。


感想

 この回では佳乃子を主役にして、東京での望まない別れから佳乃子が新しい未来へと踏み出す姿を描いている。と、同時に和という人間の魅力も味わえるお話になっている。

 最初の出会いから和はやさしかった。カッコよく決めきれないバンドや佳乃子の飲み過ぎを心配するところ。和と一緒にいるときの温かな空気に包まれている時間は、きっと佳乃子を安心させてくれていたはずだ。

 だから佳乃子は、まさか和が自分よりも京都の実家の和菓子屋を選ぶとは思っていなかった。そして意地になって「わたし、洋菓子が好きなの」と言って出ていってしまった。和は佳乃子と一緒にいたいと思っていたのに。

 東京から京都へ。バンドから和菓子職人へ。舞台や目的は変化すれども、和の夢に対するひたむきさや人に対するやさしさはずっと変わらない。そのことに気付かされた佳乃子は、やっと素直になって前に進むことができた。「ちゃんと和菓子も好き」(京都で頑張る和も好き)と言えたのだ。

 一方で和についてはバンド時代のメンバーに、今でも慕われていることが分かる。その証拠にメンバー全員が栗ManJuの被り物を大切に保管していた。メンバーそれぞれがバンド時代の頃の思い出を大切にしているということ。そして「絶対返せよ!!」というメモは、ずっと忘れないとか、また会おうとかいう意味が込められている。和は今でもみんなに愛されているのだ。

 物語のメッセージを直接的に表現するのではなく、比喩的に回りくどく表現するのは、キャラクターの心情がジワっと染み込んでくる感じで心地よい。これだから「であいもん」はやめられない。

 京都、和菓子、季節の移ろい。その上に流れる温かい人間ドラマ。一果の可愛さを使わずとも、「であいもん」は超一級のアニメなのである。