[Unity本 紹介] 開発入門Unity 3D/2Dゲーム開発 実践入門 Unity2019対応版
開発入門Unity 3D/2Dゲーム開発 実践入門 Unity2019対応版
※当ブログで紹介するのは2019対応版だが、より内容が新しい2021版があるので注意!
「開発入門Unity 3D/2Dゲーム開発 実践入門 [著]吉谷 幹人」はスマートフォン向けのゲームをUnityで制作する教本だ。3D/2Dゲームを制作しながらUnityのゲーム作りに必要な知識を実践してゆく流れになっている。
私が気に入った点は、この本が初心者向けの教本では物足りないと感じた部分にも触れているというところだ。初心者向けの本では少し難しいと判断された内容は説明せずに”とりあえずこうして下さい”といった感じの説明になることがままある。それがこの本では一歩踏み込んで補足説明されている。
また完成するゲームも、初心者向けにしてはちょっとリッチな出来上がりで満足度も高い。マップや障害物の配置をいじれば、それなりのゲームになるようなものばかりだ。さらに補足説明をキチンと読めばUnityに対する理解も深まり、ただプログラムを写しただけの状態から一歩踏み出す助けになるだろう。
個人的にはUnityの1冊目としては少し内容が重たい気がするので、2冊目の教本としてオススメしたい。別の初心者向けの教本で自分でゲームを作る喜びや楽しさを、そしてこの本でゲームを作るために使ったUnityの機能の理解を一歩進める。脱Unity初心者を目指す人には最適な本だと思う。
あと、やはりC#は事前に学んでおくべきだ。Unityに関する操作に集中するためにも必要なことだと思う。
内容をChapterごとに紹介
問題のない範囲で本の内容をイメージできるように各CHAPTERごとに簡単に紹介したい。
INTRODUCTION
Unityの特徴と概要
ここではUnityの機能やその進化を紹介している。同時にライセンスのプランによるサービスの違いにも触れている。Unityがどういうサービスなのかを知ることができる。
CHAPTER-1
Unityでゲーム開発を行う前の準備
Unityのインストールの説明。ビルドするプラットフォームの選択(WebやiOSやAndroidなど)や端末へのデータの転送方法の説明。端末へデータを転送して実機で動かす説明を最初に持ってくるのは珍しい。画面サイズや操作感の検証を重視していることがその理由らしい。
※UnityのインストールとVisual Studioとの連携については最新の情報をネットで調べたほうがいい。
CHAPTER-2
Unityはじめの一歩
―Unityの画面構成や基本操作を覚える
シーンやアセット等の言葉の説明やエディターのビューや操作の説明。他の初心者向けの本よりも詳細にかつ分かりやすく書いてある。なんとなく使っていたUnityのインターフェイスをより詳しく理解できると思う。
実際に画面上にオブジェクトを配置して色をつけたりライティングを操作してUnityの操作をしてみる。また、簡単なプログラム(Hello World的なもの)を実行してみる。
ファーストタッチにしてはかなり濃い内容なので、Unityをちょっとカジッたくらいの初心者なら勉強になることも多い。逆に本当にまっさらからUnityを学ぶ方には少し敷居が高く感じるかも知れない。
CHAPTER-3
ゲーム作成の基本
―物理エンジンとコリジョンイベントをマスターする
ボール転がしのゲームを制作しながら、オブジェクトとコンポーネントの考え方の説明。ボールを光らせたりステージを作ったりしながらUnityの機能を学んでゆく。
ゲーム制作の過程で当たり判定、重力、イベント、スクリプト、キー操作、傾き操作を扱うが、どれも考え方や各パラメータなど詳しく説明されている。あやふやな理解で不安だったことがクリアになってゆく感じだ。
初めてのゲーム制作にしてはリッチな見た目になるが、その分やることは多い。説明も多いし読むのが大変だが、ちゃんと身になる内容が書かれている。
CHAPTER-4
アセット管理とゲームオブジェクトの制御
―プレハブとエフェクトを極める
キャンディ落としゲームを制作する。アセットの導入からプレファブの作成、利用を学ぶ。さらにはプログラムでプレファブの生成やシュート(ステージにキャンディを投げ入れる)する仕組みを作る。ゲーム自体の制作だけでなく、音声や画面効果まで付与する。
ここからゲーム全体をコントロールすることを学ぶ。キャンディの増減やタイミングを制御することでゲームをゲームらしくデザインしてゆく。ゲームの面白さや難易度にも関係してくるので重要なことだ。当然プログラムする量も増えるので、ゲームを完成させるまでには根気が必要。
音も付いてエフェクトも付いて、さらに元のアセットの良さもあって、ちょっと豪華な見た目のゲームが完成する。
CHAPTER-5
3Dアクションゲームを作成
―キャラクターとGUIをコントロールする
3Dジャンプゲームを制作する。ここではキャラクターをアニメーションさせながら動かす方法やタイトル画面の設置などを学ぶ。ゲーム開始からゲームオーバーまで作るので、一通りのパッケージとしてのゲームを完成させる経験ができる。
キャラクターの制御や当たり判定なども一歩踏み込んだ(無敵時間など)ことをするので、遊びやすさを考えたゲーム作りを体験できる。また、ゲーム中の情報を表示したりステージの自動生成やキャラクターのライン移動など、地味だけど重要なことがたくさん学べる。
よく読まないと理解できないことが増えてくる。いきなり使いこなすなんて無理なので、時間がかかるけど分かるまで繰り返し説明を読むしかない。
CHAPTER-6
2Dゲームを作成
―スプライトと2D物理エンジンを使いこなす
ここではこれまで得た知識を使って2Dゲームの制作をする。横スクロールの表現の仕方や2Dキャタクターをイキイキと動かしたりする。ワンタップで遊べる単純なゲームだが、ゲーム全体をキチンと把握していないとスタートからゲームオーバーまでをコントロールできない。
右スクロールするだけの自動生成ステージ。操作はタップして上に登るだけ。しかしキャラの動きは可愛らしいし、ついついスコアアタックに夢中になってしまう中毒性もある。単純な仕組みでもアイディア次第で面白いゲームが作れることを実感できる。
CHAPTER-7
ゲームのリリースを準備して、ストアに登録する
ゲームのリリースの方法を学べる。iOSとAndroidのストアに登録する手順や設定を解説してくれている。iOSとAndroidに共通する設定もあれば、各プラットホーム個別の設定もある。登録からリリースまでの流れを知ることができる。
ゲームを制作するのとは全く別のことなので正直めんどうで気がすすまないが、多くの人に遊んでもらって収益化するには必要なことだ。私はまだこの作業はしていないので、自作のゲームが完成してその時が来たら覚悟を決めて向き合おうと思う。こういう事は情報の鮮度が大切なはずなので、その時にネットで最新の情報を確認したほうがいいと思われる。
APPENDIX
Unityをさらに使いこなすために
Unityの広告サービスを有効にしてゲーム内に広告を表示して収益化する方法を解説。プログラムに組み込むことによって広告を表示するタイミングを制御する。
ゲームのUIをどんな機種でも正しく表示するための”セーフエリア”の設定をプラグインの導入で実現する。この作業をすることによって、デバイスの仕様やノッチに影響されないUIの調整ができる。
ゲームを制作するにあったって便利なアセットの紹介。様々な種類のゲームに対応できる量のアセットが紹介されている。個人で効率的に制作するには必要になってくるだろう。
感想
この本を参照しながらゲーム制作をしていると、「レベルが上がったな」と感じるはずだ。明らかに他の初心者用の教本よりもレベルが高く、この本の内容をキチンとマスターすれば中級の仲間入りと言えるのではないだろうか。
私はプログラミングやUnityに関しては「ちょっとくらい分からなくても進め!」くらいのことを書いてきたが、ここから先はキチンと内容を理解するまで繰り返すのも必要かなと思っている。この程度で詰まっていては作りたいゲームを完成させるのは難しいと思われるからだ。
幸いにもこの本では私が”もっと知りたい”と思う部分を、かなり詳しく説明してくれていた。特にコンポーネントの”今は使わない”パラメータの説明まで載っているのはありがたかった。なぜ今回はいじらないのか納得できるし、パラメータの設定を自分なりに調整してみようという気になるからだ。
各Chapterの説明では書かなかったが、制作したゲームの最後には”こうすればもっと面白くなる”という提案がされている。この提案には答えもないので自分で制作して実装するしかない。この本の内容を理解していれば導入できるはずというのも絶妙な設定だ。脱初心者を目指すには挑戦しがいがある課題だろう。
とても詳しくUnityについて書いてある本だが、全くの初心者が集中力を切らさずに最後までやり切るのは大変だ。やはり他の初心者本でいくつかゲームを作ったことがある方にピッタリだ。2冊くらいやった後くらいがちょうどいいと思う。物覚えのいい若い方なら2冊目に選んでもやり通せそうだ。
この本をやり終えたあとは、Unityのリファレンス本を片手に自分でゲームを作ったり、もっと専門的な本でモデル制作やフィールドを構築したり、自分なりの方向へむかうのが良いのではないかと思う。個人でゲームを作るとなると、これ以上Unityだけを突き詰めるのは危険な気がする。これはあくまでも私の意見なので、話半分に聞いてほしいことだが。
2021年度版では「APPENDIX」の部分が無くなっている。もう必要ないと判断されたのだろう。どちらにしろ、とってもオススメの本である。