[アニメ レビュー] 平家物語 第1話 平家にあらざれば人にあらず

平家物語

「平家物語」はいわゆる平家物語をアニメ化した作品。口伝や書物で継承されてきた物語を現代語訳しまとめた本をベースに制作されたということだ。

 このアニメ版平家物語では、物語の観測者としての視点となるキャラクター(びわ)を設定し、主人公として平家の人々とかかわってゆく。しかし物語のメインは平家の栄華と没落を描いた部分であり、そこを見誤ると掴みどころのない物語に感じてしまう恐れがある。

 主人公”びわ”だけに注目せず、彼女が平家の人々から引き出す言葉に注目することによって、より深くこの物語を楽しめるだろう。

※本記事は2021年2月4日時点での視聴をもとにした記事です。


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第1話 平家にあらざれば人にあらず

 第1話の長さは22分57秒(1377秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です

<登場人物>

びわ
平家の盛衰によりそう琵琶法師の女の子。右目で対象の”未来”を観ることができる。平家に父を殺された恨みをもつ。
平清盛(たいら の きよもり)
保元の乱や平治の乱での戦功により平氏の権力を広めた。しかしその権力の拡大に不満を持つものも多い。
平重盛(たいら の しげもり)
清盛の子。真面目で実直。平家の奢りに危機感を持つ数少ない人物。左目で亡者を観ることができる。びわを引き取り、自分の子供たちと一緒に育てることにした。
平徳子子(たいら の とくこ)
重盛の妹。明るく美しい女性で、びわと仲良しになる。
平維盛(たいら の これもり)
重盛の長男。優しい性格。
平資盛(たいら の すけもり)
重盛の次男。なにかとびわと衝突する。やんちゃ。
平清経(たいら の きよつね)
重盛の三男。
平有盛(たいら の ありもり)
重盛の末っ子長女。


平家にあらざれば人にあらず

 栄華とはほど遠い暮らしをする民も多くある京の町を歩くびわとその父。そこへ禿(かぶろ)と呼ばれる平家のスパイ集団が駆けつけ、平家の良からぬ噂を口にした民を吊るし上げる。そのあまりの強引さについ文句をつけてしまうびわ。耳ざとくそれを聞いた禿に追求されるびわ親子。目の前で自分の代わりに父を切り捨てられたびわは、その不思議な右目で平家の行く末を観てしまうのだった。

 栄華に酔いしれる平家の一門。京を始め各地の要職にも平家が抜擢される。「平家にあらずんば人にあらず」とまで言わしめる。しかし清盛の権力への渇望は止まらない。平家の棟梁を重盛とし、福原へ移り新たな”おもしろい”を構想する。一方で生真面目な重盛は与えられた地位への不安を感じていた。

 平家の棟梁という重責に不安を覚えた重盛は、その左目で亡者を見てしまった。どこからともなく聞こえてくる琵琶の音のほうへといってみると、そこにはひとりの少女がいた。それが平家の没落を予言する少女・びわと重盛の出会いであった。左目の能力によりびわの父が平家によって切り捨てられたことを知った重盛は、びわを引き取って育てようとするがなかなか心を開いてはくれなかった。 

 正式に子供たちへびわを紹介する重盛。重盛への警戒はすぐに解いてはくれなかったが、子供たちとはすぐに打ち解けるびわであった。ある日、重盛の妹・徳子と出会ったびわは、美しい彼女の悲惨な最後を観てしまう。次男の資盛が狩りに出向いた際、後白河法皇の摂政に無礼を働いたとして資盛は制裁を受けてしまう。すぐに非礼を詫びようとする重盛であったが、逆に清盛は仕返しをしてしまう。平家の奢りは極まり、平家への不満は降り積もってゆくのだった。

 第1話の見どころ

  • 奢る平家
  • びわと重盛の出会いと交流
  • 髪などの細かい動きや背景の美しさ

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背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。



起 (247秒 + 90秒)

0-7
ロゴ 7秒

7-50
アゲハ蝶 栄華の象徴か 43秒

50-1:15
京を歩くびわと父 25秒

1:15-1:40
走る禿(かぶろ) 25秒

1:40-2:10
民を吊し上げる禿 30秒

2:10-2:40
文句をつけるびわ それに気づく禿 30秒

2:40-3:10
びわの代わりに切られる父 30秒

3:10-3:20
平家の未来をみるびわ 10秒

3:20-4:07
祇園精舎の鐘の声 47秒


4:07-5:37
OP:「光るとき」羊文学 90秒


光るとき

承 (278秒)

5:37-6:42
新年を祝う宴の清盛 65秒

6:42-7:35
平家にあらずんば人にあらず 53秒

7:35-7:57
生真面目すぎる重盛 22秒

7:57-8:12
厳島神社の構想 15秒

8:12-9:00
福原での日宋貿易 48秒

9:00-9:30
清盛から直々に棟梁を任される重盛 30秒

9:30-10:15
”おもしろくない”自分に勤まるのか 45秒


転 (305秒)

10:15-10:30
亡者が見える重盛 15秒

10:30-11:00
琵琶の音に導かれびわと出会う重盛 30秒

11:00-11:30
平家の没落を予言するびわ 30秒

11:30-12:00
平家の所業 30秒

12:00-12:32
悲しい出会い 32秒

12:32-13:00
許していない 28秒

13:00-13:35
女の子だけど男の子 35秒

13:35-14:00
礼儀作法は皆無 25秒

14:00-14:30
琵琶が好きだから”びわ” 30秒

14:30-15:00
やっぱり許してない 30秒

15:00-15:20
みてはいけない 20秒


結 (367秒 + 90秒)

15:20-16:00
重盛の子たちへの紹介 40秒

16:00-16:40
子供はすぐに打ち解ける 40秒

16:40-16:53
平安に吹く風 13秒

16:53-17:20
重盛の真意を探るびわ 27秒

17:20-18:05
”見える”ことへの恐れ 45秒

18:05-18:45
重盛の妹・徳子 40秒

18:45-19:00
見抜かれた 15秒

19:00-19:22
徳子の非業の死を予見するびわ 22秒

19:22-20:00
やりすぎの背景には平家への不満が 38秒

20:00-20:40
事件を逆手に取った清盛の横暴 40秒

20:40-21:00
おもしろかろう 20秒

21:00-21:27
後白河法皇の怒り 27秒


21:27-22:57
ED:「unified perspective」agraph feat.ANI 90秒


unified perspective

シーンリプレイ

9:00-9:30
清盛から直々に棟梁を任される重盛 30秒

 重盛を「おもしろくない」と言いつつも、その実力をしっかり見抜いている清盛。さすが歴史に名を残す人物。


16:00-16:40
子供はすぐに打ち解ける 40秒

 悲しい物語の中でホッとする瞬間。心がゆるむ。あと、お餅が美味しそう。


16:40-16:53
平安に吹く風 13秒

16:53-17:20
重盛の真意を探るびわ 27秒

 明るい昼の光の風景、髪の動きが繊細。平安の夜は暗いのでホタルの光が映える。光と暗闇の表現の対比が美しい。


感想

 平家物語は学校でも習うので、その名前は有名だが内容までは知らないという方も多いだろう。私もそのくちで、このアニメ化には興味を持っていた。

 ありえないくらい豪華なスタッフ陣・声優陣で、演技や作画に関する不安は皆無。どういったストーリーになるのかが気になる程度だった。実際に視聴したあとは、「ちゃんと古典としてやってくれるんだ」という安心感も得られた。

 古典でありながらも新しくあろうとする意思がOP・EDの選曲にも感じられる。どちらの曲も現代的に感じられるのに、この平家物語の雰囲気にピッタリで聞いてて心地よい。

 びわというキャラクターには特別な役割が課せられている。その名の通り語り部(琵琶法師)としての役割。ここぞという名場面では年季の入った琵琶法師の語りで物語を演出する。

 もう一つには平家物語のキャラクターたちと深く関わり、その性格や心情を引き出して掘り下げ、物語の厚みをもたせるという役割。第2話以降の徳子との会話などが好例だろう。

 現代語訳の本からさらにアニメに翻訳され、びわというキャラクターを通して観る古典。平家一族の悲しい結末を、アニメとして楽しませたうえで、私たちをどれだけ感情移入させてくれる作品になっているのか。楽しみである。


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