[アニメ レビュー] 負けヒロインが多すぎる! 第1話 「プロ幼馴染八奈見杏菜の負けっぷり」
負けヒロインが多すぎる!
この作品は主人公の温水和彦が多くの負けヒロインたちと出会い、彼女たちと青春を過ごしてゆく物語だ。ただのハーレム系青春ラブコメとは違った、失恋した少女たちの繊細な心そのものを描くことにこだわっているようだ。
失恋という青春の通過儀礼をヒロインたちが、悩みながらも乗り越えてゆこうとする姿を描く。恋愛そのものからはちょっと視点をズラした、誰もが体験した人生の一瞬のキラメキを思い出させてくれる作品だ。
※本記事は2024年9月1日時点での視聴をもとにした記事です。
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第1話 「プロ幼馴染八奈見杏菜の負けっぷり」
第1話の長さは24分00秒(1440秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です。
<登場人物>
- 温水 和彦(ぬくみず かずひこ)
- いわゆる”背景キャラ”を自称する高校生。ある日、同級生の八奈見杏菜が失恋する現場を見てしまい、負けヒロインたちに関わっていくようになる。
- 八奈見 杏菜(やなみ あんな)
- 和彦の同級生でクラスでも人気の少女。幼なじみの草介にフラれたところを和彦に見られてしまう。
「プロ幼馴染八奈見杏菜の負けっぷり」
<ストーリーの流れ>
⇩
旧校舎の非常階段でのお弁当契約
⇩
その他の登場人物たち
⇩
失恋を受け入れる八奈見杏菜
※背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。
起 (370秒)
ある日ファミレスでラノベを読みふけっていた和彦は、クラスメイトの八奈見杏菜が失恋しているところを目撃してしまう。運命的なふたりの出会いのシーンだが、それは杏菜の愚痴を一方的に聞かされるという残念なものであった。失恋よりも出会いよりも、杏菜が草介のストローを堪能するシーンが印象的なのが面白い。
0-1:00
もし自分にそんな青春があるのなら…… 60秒
1:00-1:30
ラノベにひたる和彦 30秒
1:30-2:45
杏菜と草介の壮大な痴話喧嘩シーンに遭遇 75秒
2:45-3:30
草介の使用済みストローを堪能する杏菜を見てしまう和彦 45秒
3:30-4:00
取り乱す杏菜 30秒
4:00-5:00
愚痴が止まらない杏菜 60秒
5:00-6:10
八奈見杏菜は負けヒロイン 70秒
承 (320秒)
草介を取られた華恋との距離感に苦慮する杏菜。和彦はファミレスで立て替えた杏菜の代金をまだ返してもらっていない。そこで杏菜は和彦に毎日お弁当を作ってくることで許してもらうことにした。学校で存在感のない和彦は杏菜にとって、愚痴をぶちまけるのにはちょうどいい存在のようだ。男としては、美少女のサンドバックになるのは(お弁当付き)、まぁそんなに悪くないポジションである。
6:10-6:45
蛇口による水道の味を知る男 35秒
6:45-7:30
耐える女・八奈見杏菜 45秒
7:30-8:00
助け舟を出す和彦 30秒
8:00-8:20
ファミレスの代金はまだ返してもらってない 20秒
8:20-9:05
担任にも覚えられていない和彦 45秒
9:05-10:00
また始まった杏菜の愚痴 55秒
10:00-10:35
思ってたより金額いってて引く杏菜 35秒
10:35-11:00
えっどな期待をする和彦 25秒
11:00-11:30
毎日お弁当の契約成立 30秒
転 (280)
文芸部の後輩・小鞠知花と先輩の月之木古都、そして和彦の妹の佳樹が登場。非常階段でのお弁当タイムでは、既に親友感のある心地よいやり取りが印象的だ。ストーリーが激変する”転”ではなく、展開から少し外れて和彦の日常を定義する落ち着いた”転”だ。
11:30-12:30
文芸部の一年生の訪問 60秒
12:30-13:25
太宰と三島には絶対に触ってはいけない 55秒
13:25-14:50
過保護な妹は心配性 85秒
14:50-15:10
カラオケは地獄だった模様 20秒
15:10-16:10
楽しいふたりの空気感 60秒
結 (372秒 + 98秒)
泥棒猫をめぐって意気投合する檸檬と杏菜。ファミレス代金の支払いもあとちょっとで精算完了。和彦と杏菜の関係も終わりが近づく。校庭で走る檸檬の姿を見て涙をこぼす杏菜。そして杏菜はようやく自分の失恋を受け入れることができた。
16:10-17:20
焼塩檸檬と光希と千早の三角関係 70秒
17:20-17:45
幼なじみと泥棒猫 25秒
17:45-18:06
現実から目をそらすふたり 21秒
18:06-18:55
だんだん手抜きになる弁当 49秒
18:55-19:30
もうすぐ終わるふたりの関係 35秒
19:30-22:22
八奈見杏菜の失恋 172秒
22:22-24:00
ED:「LOVE2000」八奈見杏菜(遠野ひかる) 98秒
シーンリプレイ
2:45-3:30
草介の使用済みストローを堪能する杏菜を見てしまう和彦 45秒
失恋したとは思えないほど恍惚とした表情の杏菜。気まずいにもほどがある光景だ。
15:10-16:10
楽しいふたりの空気感 60秒
恋愛感情なく軽口を叩ける男女の関係。最も作るのが難しい関係かもしれない。
19:30-22:22
八奈見杏菜の失恋 172秒
ようやく失恋を受け入れた杏菜。長い人生において”ちゃんと失恋する”というのはとてもプラスな要素である。
感想
失恋をした少女の繊細なココロを描いた、ありきたりのラブコメとは少し違った印象の作品だ。和彦を中心とした単なるハーレムものでないあたりもポイントが高い。振り返ると甘酸っぱい、リアルな失恋の心情を丁寧に描いている。
物語の冒頭から失恋してしまった八奈見杏菜は、偶然そこい居合わせた温水和彦を捕まえ愚痴をぶちまける。おまけに和彦のレシートに追加注文を連発し、全額を支払わせてしまう。
和彦への借金をお弁当を作ってくることでチャラにしてもらう契約をゴリ推した杏菜。こうしてふたりは奇妙なランチ友達の関係を続けることになった。ここで単純に恋愛関係にならないのがミソだ。和彦はかすかな期待を持っていそうだが、思春期の男子ならありうる当然の勘違いといえる。
和彦に愚痴りながらも表向きは平然と学校生活を過ごす杏菜。しかし彼女は屋上で突然に涙があふれてしまう。それは自分と同じような境遇(泥棒猫に男を横取りされた)の焼塩檸檬が走る姿を見たからだという。
杏菜はずっと自分の失恋から逃げていたのだ。彼女は和彦への借金をすることでその時間を止めていた。いわば借金が減ることは失恋を受け入れるカウントダウンになっていたのだ。借金のある間は、あのファミレスで時間を止めていられたのだろう。
減ってゆく借金、もうすぐ時間が動き出す。失恋をした自分の時間が動き出す。そんなとき目に入った檸檬(負けヒロイン)が走る姿。自分と同じように負け確の檸檬は、その心に不安を抱えながらも必至に彼女の夢に立ち向かっている。かたや自分は失恋を受け入れるのが怖くて立ち止まっている。
立ち向かう勇気も準備もできずに、その時はやってきた。ただただ涙を流す杏菜の姿は、はかなくも美しい青春の景色そのもだ。そして彼女の前にいる和彦は杏菜の失恋の証人であり、彼女が次の一歩を踏み出す背中を見守る良き友人となったのだ。
絵に描いたような負けヒロインの杏菜