[アニメ レビュー] パタリロ! 第5話 死の天使マライヒ

パタリロ!

 昨今は多様性やLGBTQなどへの配慮や対応が世間を騒がすことも多い。私なんかは個々人の少しの意識や配慮でお互いの生きにくさを緩和できると思うのだが、行政や社会が過剰に反応してしまっていて驚きを隠せないでいる。

 そもそもジェンダーに対する日本人の意識は低いのだろうか?むしろそんなことを”気にしない”くらいの懐の深さを持っているのではないか。だって私たち日本人には「パタリロ!」という作品があるのだから。

 この作品がアニメとして放映されたのは1982年。小学生だった私はこの作品によって男同士の恋愛や女の子みたいな美少年の存在を知ることになる。そして自然にそういうものを”そういう人たちもいるんだな”と解釈して受け入れていたのだ。

 この第5話に関しては特によく覚えていて、放映の翌日にクラスの女子生徒からマライヒのような美少年がアリかナシか問われた思い出がある。私としては当然のごとく「そういう人がいてもいいんじゃない?」みたいな返答をしたと記憶しているのだが、質問した女子たちが興奮気味でマライヒとバンコランについて議論していたのが印象的だった。

 久しぶりに「パタリロ!」を観てみて感心するのは、当時としては相当に繊細な作画と美しい世界観だ。そこに乗っかる耽美な描写とコメディの絶妙なコンビネーション。古さを感じさせない面白さがそこにある。名作はやっぱり理由があって名作なのだ。

※本記事は2023年9月2日時点での視聴をもとにした記事です。


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第5話 死の天使マライヒ

 第5話の長さは24分48秒(1488秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です

<登場人物>

パタリロ・ド・マリネール8世
マリネラ王国の国王で主人公。才能あふれる少年だが、いつもふざけた事ばかりしているのであまり尊敬はされていない。金の亡者で人をおちょくるのが大好き、だけどどこか憎めない愛すべき国王。
ジャック・バルバロッサ・バンコラン
イギリス情報局秘密情報部(MI6)所属のエージェント。非常に美形で同性愛者。ボケまくるパタリロのツッコミ役。
マライヒ
パタリロを暗殺するために選ばれた国際ダイヤモンド輸出機構の殺し屋。ラーケン伯爵によっていろいろと調教されたもよう。


第5話 死の天使マライヒ

 ローザリアへの渡航の途中、パタリロはバンコランに挨拶をするためMI6へ立ち寄った。そこで国際ダイヤモンド輸出機構の活動が活発化している状況も考慮し、バンコランもローザリアへ同行することとなった。

 パタリロ暗殺の計画は着々と進んでおり、パタリロを招待したラーケン伯爵こそ、その暗殺計画の主要な実行者であった。そしてパタリロたちはまんまと伯爵の招待に応じ、仮装パーティへと参加したのであった。

 バンコランをパタリロから引きはがし、マライヒにバンコランを襲わせることに成功したラーケン伯爵。しかしバンコランは間一髪で危機を脱出し、作戦は失敗に終わった。一方でマライヒはバンコランを逆恨みしていた。

 再びバンコランの前に現れたマライヒだったが、彼が抱いたバンコランに対する感情は憎しみではなく愛であった。経験豊富なバンコランに手玉に取られたマライヒは、見事に彼の虜になってしまう。そして別れの予感。マライヒを見送るバンコランもまた、恋に落ちていたのだった。

 第5話の見どころ

  • 美しい作画と世界観
  • マライヒの妖しい魅力
  • 大人の恋

背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。



起 (86秒 + 264秒)

0-10
ロゴ 10秒


10-1:26
OP:「パタリロ!」藤本房子 76秒


1:26-2:00
コント開始 34秒

2:00-2:45
なんだとはコント 45秒

2:45-3:15
おちょくられる新入り 30秒

3:15-4:00
バラの審査員で 45秒

4:00-4:40
バンコランもローザリアへ 40秒

4:40-5:50
命を狙われているパタリロの護衛 70秒


 パタリロとバンコランがローザリアへ向かうパート。

承 (255秒)

5:50-6:40
あとはパタリロを始末するだけ 50秒

6:40-7:25
悪い子だ 45秒

7:25-8:10
だーれがこーろしった♪ 45秒

8:10-9:10
仮装パーティへの招待状 60秒

9:10-10:05
パーティー会場にて 55秒


 パタリロの暗殺計画のパート。

転 (335秒)

10:05-11:00
ラーケン伯爵を怪しむバンコラン 55秒

11:00-11:45
罠だったか 45秒

11:45-12:10
おだてにのるパタリロ 25秒

12:10-12:45
間一髪で難を逃れた 35秒

12:45-13:15
作戦は失敗 30秒

13:15-13:45
バンコランの推理 30秒

13:45-14:50
緊張感のないパタリロ 65秒

14:50-15:40
あいつのせいだ 50秒


 ラーケン伯爵の企みを阻止するパート。

結 (445秒 + 103秒)

15:40-16:25
警察を総動員するのだ 45秒

16:25-17:10
ラシャーヌに繋がった 45秒

17:10-17:20
使えない電話だった 10秒

17:20-18:00
マライヒとバンコランの再会 40秒

18:00-18:30
これは恨みなのか 30秒

18:30-19:00
また失敗 30秒

19:00-20:00
すべてを理解したバンコラン 60秒

20:00-21:00
快楽の蟻地獄 60秒

21:00-21:45
あの子はもう私に嘘はつけない 45秒

21:45-22:05
どうなるの? 20秒

22:05-22:35
キスして 30秒

22:35-23:05
カムバーック! 30秒 


23:05-24:28
ED:「美しさは罪」竹田えり 83秒


24:28-24:48
次回予告 20秒


 マライヒとバンコランが恋に落ちるパート。



シーンリプレイ

2:00-2:45
なんだとはコント 45秒

 このノリは昭和。単純だけれど、演技や間の取り方がうまいので今でも十分に面白い。


16:25-17:10
ラシャーヌに繋がった 45秒

 原作者・魔夜峰央の別作品「ラシャーヌ」の主人公。パタリロをおちょくることができる美少年。


20:00-21:00
快楽の蟻地獄 60秒

 これ以降のシーンのすべてが耽美的で美しい。原作へのリスペクトを感じるクオリティだ。


感想

 まずは原作の雰囲気をそのまま持ってきたような画面の美しさ。キャラクターの繊細な魅力を見事に表現している作画も素晴らしい。洗練された美しさとはこういうことなのか、令和のいま観ても少しも古さを感じない。電話はさすがに古いが。

 パタリロを取り巻く国や組織の関係はしっかりと作られており、スパイアクションやミステリの要素も盛り込まれている。それでいてこの作品はジャンルとしては”ギャグ”なのだ。それもコント形式から一発ネタまでさまざまな手法で視聴者を飽きさせない。

 そして最も重要なのがロマンス。しかも大人と美少年のBLという攻めた内容。ラーケン伯爵に調教され道具のように扱われるマライヒ。美しい彼はバンコランへの憎しみが、敗北から快楽に堕とされたことでバンコランへの恋心へと変わる。

 ふたりの別れのシーンでのセリフと表情の一つ一つが彼らの心情を雄弁に繊細に語っており、性別という視点を飛び越えた”愛情”の表現に切ない気持ちにさせられる。純粋な”恋”そのものを見事に描き出した特筆すべきシーンだったと思う。

 これだけの文学的な作品を名画のパロディやパタリロのギャグでまとめてしまう驚くべきセンスの良さ。私たちはこんなに優秀なエンターテイメント作品に小さな頃から触れていたのだ。これは漫画文化で育ってきた日本の文化的な強みであり、本当の意味での多様性を受け入れる土壌になっているのではないだろうか。