[アニメ レビュー] ガールズバンドクライ 第3話 ズッコケ問答

ガールズバンドクライ

 高校を中退して東京へ出てきた仁菜は、ストリートミュージシャンの桃香と出会う。実は彼女を東京へと導いたのはネットで出会った桃香の曲だったのだ。

 東京へ来たばかりの仁菜と東京を去ろうとしている桃香。なんやかんやでふたりはバンドをすることになった。仁菜は親との約束の大学受験をするため予備校へ通いながらの活動となる。ただでさえ噛み合わない仁菜と桃香の生活。そのうえドラムとしてバンドに加わったすばるは仁菜の苦手なタイプなようで……。

 3DCGをふんだんに使ったフルアニメーション作品で、イラストがそのまま立体になったようなキャラクターがヌルヌル動く。表情も豊かで3DCGもここまで来たかといった感じだ。

 リアルなロックバンド「トゲナシトゲアリ」のメンバーによる演技と楽曲リリース。ライブイベントも並行して開催されるなど、お金も人もかけた攻めたプロモーション展開をしている。

 失敗なんて考えないで突っ走るその姿は、まさにロック。そっちがその気なら、こっちもそれに乗っかって応援するしかない。

※本記事は2024年4月28日時点での視聴をもとにした記事です。


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第3話 ズッコケ問答

 第3話の長さは23分51秒(1431秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です

<登場人物>

井芹 仁菜(いせり にな)
高校を中退して上京してきた17歳。とってもめんどくさい。ボーカル担当。
河原木 桃香(かわらぎ ももか)
男まさりな20歳のストリートミュージシャン。とにかくカッコいいがガサツな部分も垣間見える。ギター担当。
安和 すばる(あわ すばる)
芸能スクールに通う17歳。世渡り上手な美少女。ドラム担当。


ズッコケ問答

<ストーリーの流れ>

バンドに夢中で勉強が手につかない仁菜

すばるに対してもバンド活動に対しても素直になれない仁菜

ストリートライブを計画する桃香

ライブで自分を開放する快感を知った仁菜


背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。



起 (288秒)

 バンドのことが気になって仕方がない仁菜。音楽に夢中になる姿をみると、彼女がバンドをやることは運命づけられていたのだと思わされる。しかしメンバー間の空気はまだぎこちなく、桃香もこのバンドの曲をイメージできないでいるようだ。


0-10
ロゴ 10秒

10-1:00
勉強に身が入らない仁菜 50秒

1:00-1:34
ついに朝になってしまった 34秒


1:34-3:04
OP:「雑踏、僕らの街」トゲナシトゲアリ 90秒


3:04-3:45
自習室でも迷惑な仁菜 41秒

3:45-4:20
ぎこちない仁菜とすばる 35秒

4:20-4:48
話を聞いていない仁菜 28秒

承 (312秒)

 気持ちはバンドに傾いているだが、理性がそれを拒否している仁菜。それはすばるにも伝わっていて、その原因が自分にあるのかとすばるは思っている。好意的な態度で接するすばるを避ける仁菜はとても感じが悪く、主人公ながらイライラさせられるキャラクターだ。


4:48-5:30
アプリは桃香に教えてもらった 42秒

5:30-6:10
自分に喝を入れる仁菜 40秒

6:10-6:30
仁菜を追いかけるすばる 20秒

6:30-7:15
すばるを受け入れない仁菜 45秒

7:15-7:45
仁菜にスマホを届けさせる桃香の作戦 30秒

7:45-8:15
なかなかたどり着けない仁菜 30秒

8:15-9:00
すばるに拒否反応が出る仁菜 45秒

9:00-9:25
逆にグイグイ押してくるすばる 25秒

9:25-10:00
仁菜の気持ちを聞きたいすばる 35秒

転 (330秒)

 仁菜だけでなく、人生が順風満帆に見えるすばるにも抱えるものがあった。だからこそ、その周囲への不満を読み取っていた桃香はふたりをバンドへ誘った。きっと桃香も同じように抱えているものがある。だから仁菜が逃げ出しても、バンドからは離れられないことを分かっているのだろう。


10:00-11:20
とことんめんどくさい仁菜 80秒

11:20-11:50
ついに切れるすばる 30秒

11:50-13:10
すばるのバンド活動への参加はささやかな反抗 80秒

13:10-14:00
この3人ならライブが最適 50秒

14:00-14:30
桃香によるループマシンの実践 30秒

14:30-15:30
怒って帰る仁菜 60秒

結 (395秒 + 106秒)

「どうせうまくいかない」「どうせ失敗する」だから突っ走れ!というメッセージが刺さる。仁菜の声がバンドの演奏に乗ったときの震えがこちらにも伝わってくる演出が素晴らしい。めんどくさくてトゲトゲしい仁菜の人間性そのものがロック。その本質を見抜く桃香のプロデューサー的視点が印象に残る。最後の「声なき魚」のライブシーンは彼女たちの魅力が結晶化したような最高のロックステージとなった。


15:30-16:00
お前はどっちにしろ後悔する 30秒

16:00-16:15
その怒りをぶつけろ 15秒

16:15-17:00
どうせうまくいかない、どうせ失敗する 45秒

17:00-17:25
あーあーあーあーあーーー 25秒

17:25-18:10
桃香の罠にハマった仁菜 45秒

18:10-18:35
歌や踊りは人間の本能 25秒

18:35-19:25
牛丼屋での新たな出会い 50秒

19:25-19:57
桃香のバンドへの想い 32秒

19:57-20:40
心から裸になれ 43秒

20:40-21:20
そのエネルギーは紛れもないロック 40秒

21:20-22:05
仁菜はロックンロールなんだよ 45秒

22:05-23:30 「声なき魚」新川崎(仮) 85秒

23:30-23:45 ロックだ 15秒

23:45-23:51 次回予告 6秒

シーンリプレイ

7:15-7:45
仁菜にスマホを届けさせる桃香の作戦 30秒

 仲良くなるために本音でぶつかることをうながしたのだろう。その化学反応がロックには必要なのだ。


13:10-14:00
この3人ならライブが最適 50秒

 お行儀よく整形された音ではなく、荒っぽい暴れた音こそこの3人には似合う。


16:15-17:00
どうせうまくいかない、どうせ失敗する 45秒

 だからこそ挑戦する。どこまでも前のめりな姿勢がロック。傷つきながら転がり続けるのだ。



感想

 ロックという音楽は進化とともにその範囲を広げ、いろいろな要素を取り込んできた。ヘビーメタルやパンクやフォークもそうだし、日本限定なら歌謡ロックや演歌ロックなんていう分類もある。

 しかしそのどれもが音楽的なルーツやスタイルの分類ための分類であり、ロックの本質を捉えたものではないと思う。私が考えるロックの本質とは世の中に対する自分の姿勢だ。

 それはカッコいい生き方かもしれないし、カッコいい死に方かもしれない。あるいは世の中に対する不満や怒りの叫びや、物事に対する批判でもいい。それを音の塊にしてぶつけるのが私にとってのロックなのだ。

 この作品でいえば仁菜がロックそのものを表している。この自己矛盾の塊のような少女は、毎回めんどくさくてどうしようもない。今回もすばるの歩み寄りに対して意固地になって心を閉ざしていた。

 驚きなのはその仁菜の抱える鬱屈をアニメーションとしてライブで表現してみせたことだ。カッコいいライブシーンや可愛いライブシーンは他のアニメーションでも楽しめるが、感情の塊をぶつけられるようなライブシーンはなかなか観れない。

 リーダー的な立場の桃香は「なんか”ライブ”って感じがするんだよね、この3人って」と言っているが、感情をむき出しにしてぶつかり合うこの3人だからこそ、ストリートライブが一番バンドの魅力を発揮できることを感じ取っているからだろう。

 キャラクターもまだ増えるようだし、メンバーの揉め事もどんどん起きそうだ。この空中分解しそうなピリピリでスリリングな展開を最後まで楽しませてくれるのを期待したい。