[アニメ レビュー] 葬送のフリーレン 第2話 別に魔法じゃなくたって…
葬送のフリーレン
魔王を倒し王都へ帰還する勇者ヒンメルの一行。そのパーティの魔法使いであるフリーレンはエルフだ。飛び抜けて寿命が長いフリーレンにとっては、ヒンメルたちとの10年におよぶ旅は一瞬。その時間感覚のギャップを活かしたドラマを魅せてくれる作品だ。
本作品は第1話から第4話までをスペシャル放映し、フリーレンの旅立ちとその意義がわかるところまで一気に観せてくれた。作画や音楽のクオリティも申し分ない最高の出来であった。このクオリティが続くなら、間違いなく2023年度の名作アニメのひとつとなるだろう。
4っつのエピソードのどれもが素晴らしいものだったが、最も私に刺さった第2話をレビューすることにした。新しい仲間となるフェルンとの出会い。ヒンメルたちとの思い出。どちらも心が温まるエピソードだ。
※本記事は2023年10月9日時点での視聴をもとにした記事です。
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第2話 別に魔法じゃなくたって…
第2話の長さは26分00秒(1560秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です。
<登場人物>
- フリーレン
- エルフの魔法使い。勇者ヒンメルの一員として魔王討伐に貢献した。
- ヒンメル
- 魔法を討伐した勇者。弱いものに優しい英雄。しかしナルシストなのが玉にキズ。
- ハイター
- ヒンメルのパーティの僧侶。偉大な僧侶だがお酒が大好きな生臭坊主。孤児であるフェルンを引き取って育てている。
- フェルン
- ハイターと生活している孤児。魔法の才能がありハイターの導きによりフリーレンの弟子になる。
別に魔法じゃなくたって…
飛び降りをしようとしていたフェルンを助けたハイターは、フェルンを自立できるようにフリーレンを騙したのだった。まんまと嵌められたフリーレンはフェルンとともにハイターを看取り、ふたりで旅へと出発するのだった。
旅の途中で民間魔法を集めるフリーレン。今度は放置されたヒンメルの像の掃除。キレイになった像に飾る花畑を造ることになり、フリーレンはそこへヒンメルの故郷の花である蒼月草の花を植えることにした。しかしそれがどんな花なのか彼女は知らない。この辺りでは絶滅したという蒼月草の花を探し始めるフリーレンだが、フェルンはそれには否定的な意見のようだ。
遅々として進まない蒼月草の探索にしびれを切らしたフェルンは、近縁種の種で手を打つことを提案する。しかしフリーレンは理解を示しつつも、もう少しだけ続けたいと言う。我慢の限界が来たフェルンだったが、シードラットの導きでたどり着いた塔でついに蒼月草と出会い、無事にヒンメルの像を飾ることができたのだった。
第2話の見どころ
- フリーレンと仲間の絆
- キャラクターの細かい描写
- 魔法を選んだ理由
※背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。
起 (90秒 + 210秒)
0-1:30
OP:「勇者」YOASOBI 90秒
1:30-2:05
長距離魔法の極意 35秒
2:05-2:25
ちょっと落ち込むフェルン 20秒
2:25-3:30
鍛錬の日々 65秒
3:30-4:00
フェリンは根を詰めすぎ 30秒
4:00-4:30
倒れるハイター 30秒
4:30-5:00
いつかではなく今 30秒
フリーレンがフェルンに修行をつけるパート。
承 (375秒)
5:00-5:25
飛び降りをしようとする少女 25秒
5:25-6:20
意志を繋げてゆくために 55秒
6:20-7:00
ハイターに後悔をさせたくない 40秒
7:00-7:50
達成へのみち 50秒
7:50-8:50
ハイターの策略 60秒
8:50-9:50
別れの作法 60秒
9:50-10:50
ヒンメルならそうした 60秒
10:50-11:15
新たなる旅立ち 25秒
ハイターを看取り、フリーレンとフェルンが旅立つパート。
転 (320秒)
11:15-11:40
収穫のお手伝い 25秒
11:40-12:30
同じだよ 50秒
12:30-13:10
放置された銅像 40秒
13:10-13:40
命の恩人 30秒
13:40-14:15
ヒンメルはナルシストだった 35秒
14:15-15:00
ヒンメルとつながる瞬間 45秒
15:40-15:40
この辺りでは絶滅した 40秒
15:40-16:35
自分のために 55秒
変な魔法を集める旅をするふたりのパート。
結 (465秒 + 100秒)
16:35-17:25
蒼月草を探す日々 50秒
17:25-18:00
おばあさんのところへ 35秒
18:00-19:00
フェルンの想い、フリーレンの想い 60秒
19:00-20:00
あと少しだけ 60秒
20:00-20:30
シードラットを追いかけて 30秒
20:30-21:30
魔法を集める理由 60秒
21:30-22:15
種の隠し場所 45秒
22:15-22:50
ヒンメルが見せたかったもの 35秒
22:50-23:50
でも魔法を選んだ 60秒
23:50-24:20
思い出の続き 30秒
24:20-25:50 ED:「Anytime Anywhere」milet 90秒
25:50-26:00 次回予告 10秒
魔法を選んだ理由のパート。
シーンリプレイ
2:25-3:30
鍛錬の日々 65秒
ハイターと過ごす穏やかな日々。修行で培われるフリーレンとフェルンの絆。3人が過ごした宝石のように尊い時間。
20:30-21:30
魔法を集める理由 60秒
くだらない理由。人の人生を動かすのは案外そういう些細なことだったりするものだ。
22:50-23:50
でも魔法を選んだ 60秒
ハイターが喜んでくれた。フェルンだってそんなくだらない理由で魔法を選んでいたのだ。
感想
美しい背景に繊細な演技と作画、第1話からすでに名作の風格が感じられる作品だ。特にセリフや演技の行間を読ませるような演出はアニメーションの枠を超えており、評価基準の上がった近年の日本の週間アニメのハードルをさらに上げてしまうだろう。
かつての仲間ハイターに会いに立ち寄ったフリーレンは、そこで孤児の少女フェルンと出会う。そこでハイターが見せるフェルンに対する表情は、まさに孫を見るおじいちゃんの目。かわいくて仕方がないのが伝わってくる。
フェルンの方もハイターを慕っており、”ひとりで生きてゆかなければ”という問題に対して必死で立ち向かっている。その方法はなんでもよかったわけだが、フェルンが魔法を選んだのはハイターが自分の魔法の才能を褒めてくれたからである。
それはフリーレンが民間魔法を集める理由とも重なっている。かつて花畑の魔法を仲間たちが喜んでくれたという経験がフリーレンを動かしている。ふたりともたまたまそれが魔法であったというだけで、大好きな人を喜こばせることが彼女たちの原動力になっているのだ。
この作品が私たちの心に響くのは、フリーレンの出会うエピソードが人の人生そのものだからだ。誰かに「歌が上手だね」って言われたり、「絵が上手だね」って言われたり、「お手紙ありがとう」って言われたり。そういう単純なことが意外とその後の人生の大きな選択を左右したりするものだ。
フリーレンの時間感覚にしてもそうで、子供の頃は誰しも親がいなくなるなんて思ってもみないし、誰かとの繋がりが途切れてしまうなんて考えもしない。だから平気で失礼なことを言ったり、ワガママしたい放題してしまう。ヒンメルの死に遭遇し後悔をするフリーレンの姿は、まさに誰かの死を前にした自分自身だと感じた方も多いだろう。
魔王討伐から成長したフリーレンは、かつての旅の道のりをフェルンと旅をしながらヒンメルたちとの思い出をたどる。そこでフリーレンは後悔をひとつひとつ拾いながら仲間たちの自分に対する親愛の情をもう一度受け取る。それはまた、今まさに自分がフェルンに対して抱いている慈愛の心だ。
この作品は大人が観るのと子供が観るのでは感じ方も印象もさぞ違うことだろう。できれば思春期の頃に戻って観てみたいなと思う作品だ。
フェルンの修行と魔導書の解読をつづける日々。そんなある日ハイターが倒れてしまう。フェルンの修行へののめり込み方に不安を感じるフリーレン。しかしフェルンは”いつか”ではなく、一刻もはやくハイターに魔法を見せたかったのだ。