[アニメ レビュー] 怪病医ラムネ 第7話 「頭からポップコーン・前編」
怪病医ラムネ
怪病医ラムネは人の心に入り込む”怪”が引き起こす”怪病”を治療するラムネとその弟子クロが活躍する物語である。
怪病はマヨネーズや餃子などといった食べ物や調味料のカタチで人間の身体にあらわれる。現実にはありえない発病の仕方であるが、原因をたどってみると道理の通ったものでなるほどと思わせてくれる。治療にあたっては”怪具”と呼ばれる道具を用いる。
怪病の原因となる人の心の問題は様々で、現実に生きる私たちも共感できるものやザマァなものまでバラエティに富んでいる。どんな怪病が出てくるのか、どうやって解決するのか、毎回楽しみなアニメである。
こういったスタイルの作品を私たちはたくさん知っている。それでもなおオリジナリティを感じさせてくれる作品が出てくるのは、日本の漫画・アニメコンテンツの才能の層の厚さを認識させてくれる。また、そういったコンテンツが当たり前のように楽しめることを素直に嬉しいなと感じるのだ。
※本記事は2021年2月28日時点での視聴をもとにした記事です。
第7話 「頭からポップコーン・前編」
第7話の長さは23分40秒(1420秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です。
<登場人物>
ラムネ
本作の主人公。人に取り付いた”怪”を治療する怪病医。いいかげんな印象の行動が多いが、怪病医としての腕はたしか。
クロ
ラムネの弟子で助手。落ち着いた雰囲気の中学生。ラムネのいいかげんな言動や行動には厳しいツッコミをいれる。
青菜 春(あおな しゅん)
クロのクラスメイト。アートの才能があり独自の世界観を持っている。頭からポップコーンが飛び出す怪病にかかってしまった。
起 (211秒 + 90秒)
0-10
ラムネ退院 10秒
10-30
クロのクラスメイト青菜 20秒
30-1:08
何かに気づくラムネ 青菜の頭からポップコーン 38秒
1:08-2:38
オープニングテーマ 90秒
2:38-2:55
ポップコーンが出るのは悲しい 17秒
2:55-3:05
かわいい宇宙人完成 いつもどおりの青菜 10秒
3:05-3:15
病院へ来ていたのは母親のお見舞い 10秒
3:15-3:45
宇宙人を握りつぶす青菜 何かを作るから母親が入院 30秒
3:45-4:40
怪守巾着を貸し出す ポップコーンが出る原因と消えると悲しい原因 55秒
4:40-5:01
友達いないクロぴー 21秒
承 (324秒)
5:01-5:50
青菜のすごい才能 なぜかやめさせたい父親 49秒
5:50-6:20
息子大好きな父親 複雑な声色の青菜 30秒
6:20-6:55
母親が倒れたのは青菜のせい? 35秒
6:55-7:10
父親の会社を継ぐために勉強 15秒
7:10-7:30
あふれるイマジネーション 20秒
7:30-7:38
母親のために 8秒
7:38-8:30
物覚えのいいクロ 学校ではぼっち 52秒
8:30-8:47
学校での青菜の見守りをクロにさせる 17秒
8:47-9:30
キラキラいっぱい 物を創ることをやめる青菜 43秒
9:30-9:45
頭から出たポップコーンを怪守巾着に入れるクロ 15秒
9:45-10:00
無愛想なクロがもどかしいラムネ 15秒
10:00-10:25
人間性は隠せない ラムネの十八番 25秒
青菜の才能は本物だが、父親はそれを良く思っていない。発言のはしばしに父親の歪んだ愛情が垣間見える。9:45クロのそっけない態度が近寄りがたい印象をクラスメイトに与えている。しかし真面目で優しい心根はいつかみんなに伝わるはず。承では、問題の原因と思われる”病の構図”と気遣いのある行動とはうらはらにそっけない態度で誤解をされているであろうクロが描かれている。
転 (325秒)
10:25-11:10
ポップコーンは青菜の消えたキラキラ ごめんね 45秒
11:10-12:00
ポップコーンの仕組み 抑えつけた何か 50秒
12:00-13:03
クロへのアドバイス いらない腹芸 63秒
13:03-13:30
下校中のクロ 青菜に声をかける 27秒
13:30-13:45
胸がギューッと痛くなる 家でした青菜 15秒
13:45-14:25
青菜の創るものは楽しい いつもお掃除 40秒
14:25-14:35
橋の上を歩く人影 10秒
14:35-15:50
フタリノセカイ 75秒
イマジネーションがキラキラの正体。抑えつけることで弾けたキラキラ。12:00いらない腹芸だけどちょっとかわいい。13:30耐えられずついに家から逃げ出した青菜。クロはちゃんと伝えた。青菜はちゃんとクロのことを見ていた。14:35これがクリエイティブな人の頭の中。転では、殻を少し破ったクロとクロの一言で”楽しい”の意味に近づく青菜の友情の芽生えを描いている。
結 (365秒 + 105秒)
15:50-16:20
帰らなくていいの? 重力の境界 30秒
16:20-17:00
なりたいもの 重力がかかる 40秒
17:00-17:30
青菜の好きなこと 夜ふかしはダメ 30秒
17:30-18:00
ちゃんと家族に連絡 30秒
18:00-19:00
好きなものを創る治療 キラキラの間違い探し 60秒
19:00-19:18
遊び疲れて眠るクロと青菜 18秒
19:18-19:40
青菜を迎えに来るパピー 22秒
19:40-20:10
父に連行される青菜 30秒
20:10-20:30
青菜の父を問い詰めるラムネ 20秒
20:30-20:50
母親の入院の謎 20秒
20:50-21:10
青菜を外出禁止にする父 20秒
21:10-21:55
青菜のいない学校 ポップコーンが出続ける青菜 45秒
21:55-23:25
エンディングテーマ 90秒
23:25-23:40
次回予告 15秒
16:20自分を縛る力を重力と表現する青菜。きっと青菜の心は宇宙にある。青菜は天才だからこそ”好きなこと”に気づいていない。17:30保護者らしい面倒見の良い一面をみせるラムネ。19:40どんどん青菜を追い詰めていく青菜の父ではあるが、なにかに追い詰められているのは父の方。結では、治療への糸口を掴みかけた青菜が父によってそれを奪われてしまう。
感想
マヨネーズ・竹輪・唐辛子・餃子・ポップコーン、このアニメに登場する怪異は私たちの生活に馴染みのあるものばかりだ。決して夜闇に紛れて襲ってきたり異形の怪物が攻撃してきたりはしない。人間の心に静かに入り込み蝕んで苦しめる。
発病後の症状も、はた目にはコミカルで軽いものに思えるものが多い。ちょっとおかしいな、というくらいである。しかし患者の心に巣食う”怪”は深刻でやっかいなものばかりだ。
このアニメに登場する怪病がありえないものばかりなのにどこかリアリティを感じさせるのは、怪病の原因が私たちの生活にありふれた脅威だからであろう。自分にとっては深刻であっても他人からはコミカルに見えていたり、相当に症状が進行していても自覚できていなかったり、悲しいかなそこらへんも物語中でリアルに描かれている。
第7話では純粋な少年の青菜が父親の思想にどんどん侵食されてゆく様が描かれる。イマジネーションの抑圧、愛情の押しつけ、親の立場を利用したコントロール。青菜の追い詰められる様子は残酷でいたたまれない気持ちになった。
世の中にはセカイの色を失わせるのが得意な人間がわんさかいる。そういう輩は放っておけばいいのだけど、若く純粋な人ほどそういうのに狙われ汚されて病んでしまう。しかし救ってくれる人がいるのもリアルなことなのだ。
時に厳しい現実を突きつけるラムネは安易に患者を助けたりはしない。怪具を使って自分で解決する指針を与えるだけだ。それはラムネが人が持つ本来の”強さ”を信じているからだろう。
現実の私たちはラムネに治療をしてもらうことはできないが、アニメを楽しむことで癒やしてもらうことはできる。幸い今はスマホやタブレットでいつでもアニメが楽しめる。つらい時は逃げてアニメに癒やしてもらうのもアリだと思う。せっかくテクノロジーが生み出した怪具だ。使わなきゃ!
登場シーンでは困った不思議ちゃんに思える青菜だが、5分もたたないうちに好感を抱かせる。2:38ポップコーンというありふれた物を怪異として扱うのは面白い。3:45あえて自身に答えを見つけさせるラムネの治療スタイルが物語を面白くする。4:40なんだかんだで弟子のことが気にかかっているラムネ。起では、青菜のポップコーン問題とクロの友達問題、この物語の2つの問題を提起している。