2022年11月に「Meta Quest2」を買って1ヶ月ほど使ってみた感想。

なぜVR機器を買ったのか

 今の今まで本当にVRとかメタバースに興味なんてなかったのだけど、VTuberの動画で出てくるメタバースや、その中で活躍しているVTuberの方々を観ていて気になってきた。はじめはVRChatをPCにダウンロードして遊んでいて、別にVRでなくてもいいかなと思っていたのだけど、遊んでいるうちにVR機器でVRChatの世界を観てみたいと思うようになったのだ。

 今年には完成するという「ぽこピーランド」なる遊園地も訪れたいと思っているし、本当にメタバースやVRが世の中に浸透するかどうかを自分の体験をもとに判断したかったということもある。少々というか、私にとってはかなり高い買い物になったが、せっかく買ったのだし同じようにVR機器を買おうと考えている方の助けになればと思う。ほんと高いし……誰しも失敗したくないものね。 

どうしてMeta Quest2を選んだのか

 VR機器の購入を考えていらっしゃる方は、2023年1月現在ならおそらくQuest2かPICO4の二択で迷っていると思う。私もそうだった。11月にはQuest3の発売が予告されている。PICO4のほうが基本スペックは高い。この状況であえてQuest2を購入したのは、単に我慢ができなかったというのもあるが、VRのスタンダートとしてQuest2が位置づけられていると感じたからだ。

 あと私はゲームをするので、スタンドアローンで遊べるゲームの選択肢が多いQuest2を選んだ。特に「バイオハザード4」がどうしても遊びたかったのでQuest2を選んだのだ。ゲーミングPCやハイスペックPCを持っているならば、私のようにQuest2でしか遊べないソフトがない限りPICO4でも問題ないと思う。

 よっぽど辛抱たまらんという方以外は、2023年末に発売されるであろうQuest3の発売を待ってから、じっくりと比較検討されるのが無難である。「バイオハザード4」にしてもQuest3でも遊べるだろうし、PICO4との差がどれほどのものなのかもQuest3が発売されないと話が始まらない。

 とにかく私は非常に微妙な時期にQuest2を購入した。レンズの端の方に傷があり、気づいた時はテンションだだ下がり。交換依頼も面倒すぎてやめた。だがしかし、だがしかしである。初めてのVR体験はものすごく興奮したし、その威力には感動した。少しも後悔はしていない。デバイスがもっと軽くなって扱いやすくなれば、もっと面白い世界が待っている。メタバースと現実の境界はどんどん曖昧になる。久しぶりに未来を感じた体験だった。Quest3貯金を検討するくらいには心を動かされたのだ。

 ちなみに「バイオハザード4」最高でした。名作が更に名作に!ただ調整しないとものすごく酔います……。

スタンドアローンとPCVR

 どのVR機器を買うのかを検討する際に把握しておくべきことがある。それはVR機器単体で使用するのか、PCに繋いで使用するのかである。前者をスタンドアローンと呼び、後者をPCVRと呼ぶのが一般的だ。概念としてはすぐに理解できるのだが、You Tubeなどで解説動画などを観ていると、ソフトの解説とかの絡みで説明されることが多く混乱することも多い。あとから「あーPICO4でも良かったかも」なんて後悔しないように、しっかり把握しておくことをオススメする。

スタンドアローン

 文字通りVR機器単体でソフトを遊んだりすること。Quest2ではPCやスマホやQuest2本体からOculusストアに接続して、ソフトを購入することができる。他にも「App Lab」というソフト配信システムがあり、Oculusストアの厳しい審査には通らなかったソフトや開発中のソフトも遊べる。App LabのソフトはOculusストアの一覧には出て来ないが、ソフト名で検索すると表示される。App Labのソフトは未承認の公式ソフトといった感じで、承認されたソフトよりはゆるい審査には通っているのでウイルス等の心配はいらない。

 PCやスマホで購入できるものの、自分の所持ソフトの”リストに追加”されるだけなので、ダウンロードはQuest2本体側で行う。PCやスマホに繋いで追加するのでPCVRと言えなくもないが、あくまで補助的なものとして考えるべきだと思うのでスタンドアローンの範疇とした。

 Quest2はOculusストアで購入・遊べるタイトルが多く、本体だけでかなり楽しめる。特にVRゲームで遊びたい方はQuest2は魅力的に感じるだろう。ハイスペックPCやゲーミングPCを持っていなくて、それでもVRでゲームソフトをたくさん遊びたいという方は2023年の今Quest2を選んでも楽しめると思う。11月にはQuest3が出ると言われているのでそれまで待つほうがいいとは思うが、そこは気持ちと財布と相談だ。

PCVR

 こちらも書いてある通りPCとVR機器を繋いでいろいろやること。有線でも無線でもPCVRという風に言う。Quest2もPICO4もPCVR機器として使うことができる。PCと繋ぐと何がいいのかというと、Steamのゲームを遊ぶことができるのだ。ゲームのネット販売を行っているSteamではVRゲームも扱っている。Quest2の人気タイトルも数多く配信されているので、PICO4単体では遊べないソフトもPCVRで繋げれば遊べるようになるのだ。

 SteamVRでダウンロードしたソフトはPC側で保存され、起動も処理も主にPC側で行うのでVR機器本体はモニタのような役割になる。本体側のストレージを使わないので、ハードディスクの残量を気にせずソフトを購入できる点は嬉しい。またSteamVR以外にもPC内に保存している動画に直接アクセスしたりできるソフトを使えば、容量が大きくなりがちなVR動画も本体のストレージを消費することなく視聴できる。

 無線でPCと繋げれば体を動かすゲームもスタンドアローンであるかのように快適に遊ぶことができる。ただVR機器はバッテリー消費が激しいので、そんなに長い時間はPCVRで遊べないと思う。私はバッテリー付きのストラップを購入して使用しているが、それでも気がつけばバッテリー警告が出て驚く。座って遊ぶゲームのときは有線で遊ぶというのも選択肢のひとつだ。ただそれでもバッテリーは減るが。

ゲームかそれ以外か

 OculusストアとSteamには同じゲームが並んでいるが、別物の商品として考えるべきだと思う。どちらもQuest2で遊べるので区別があいまいになりがちだが、Steamで買ったゲームはPCに接続してSteamVRというソフトを起動しないと遊べない。Quest2本体だけで遊べるOculusストアのゲームとは内容は同じでも使い勝手に差がある。

 なのでどうしても遊びたいゲームがあって、PCを使わずに本体だけで遊びたいのならQuest2にするべきだ。逆にゲームよりもVRがどんなものなのか試したいとか、VR動画を中心に軽く楽しみたいのならPICO4を選んだほうが満足できると思う。PICO4でもゲーミングPCがあればSteamVRで遊べるので、Quest2と同じくらい豊富な数のゲームを楽しめるだろう。

目の前に人がいる、キャラクターがいる

 おそらく一番気になるであろう人やキャラクターがどう見えるのかという点だが、思った以上に実在感を持って目の前に現れる。360°見渡せることや、その中を歩いて回ることもワクワクする体験であるが、そこそこ荒い映像でも対象物がそこに存在するという感覚がそれを上回る。買ってしばらくはYou TubeのVR動画をあさっているだけで時間が過ぎた。

 ちょっと不思議に感じるが、メガネをかけている方はメガネをかけないと映像がぼやける。普段メガネをかけている私は裸眼で遊んでいるのだけど、字が読みづらくてちょっとつらい。メガネ用アタッチメントを付ければメガネをかけたまま遊べるし、度付きのレンズなども購入できるので、資金に余裕がある方は注文してもいいかもしれない。

 Quest2のレンズは映像がはっきり見える範囲(スイートスポット)が狭い。ちょっとでもズレていると映像がぼやけてしまう。ただ使っているうちにスイートスポットに合わせて被るのが上手くなるから問題ない。PICO4ではもう少しスイートスポットの広いレンズが使われているらしい。まぁこのあたりは技術の進歩を待つしかないと思う。

Meta Quest2は音がとてもイイ

 PICO4の音に関してはまったく分からないが、Quest2は音がとてもイイ。特に「Beat Saber」なんかは音楽に圧倒されるほど音質がキレイだ。ゲーム体験やVRにおける音の大切さが実感できる。VR体験の没入感にかかわる重要な部分だ。なにしろ音なので文字で書いても伝わらないのがもどかしい。

とにかく酔う、どうやっても酔う

 プレイヤーキャラが動かないゲームは問題ないのだが、プレイヤーキャラが移動するゲームは最初はどうやっても酔います。もうゲーム始めて4秒で酔う。私は3Dゲームでほとんど酔ったことがなく、唯一酔ったのはドラクエ8の最初の町「トラペッタ」だけだ。今は少し慣れて1時間くらい遊んでも平気になったが、最初は5分も遊んでいられなかった。自分で操作して動くようなゲームは必ず視点や操作を調整できるようになっているので、早めに自分に合った操作方法を見つけることが大切だ。

 人は顔よりも目を先に動かす。そこでゲーマーは必ず右スティックで視点を動かしてしまう。VRでは顔の向きと右スティックが別の操作として割当られている。ヘッドセットは目の動きを追っているわけではなく、顔の向きやキャラクターの向きを基準に映像を写している。まずここで目の見ている方向と基準となる視点の向きがズレる。

※↓の背景素材は、みんちりえ( https://min-chi.material.jp/様よりお借りしました。

視点がズレる

 さらに右スティックは8方向や16方向にスナップして視点を変えるように設定されているゲームが多い。つまりさっきズレた視点全体がまるごと移動する。基準となる真正面の位置が移動してしまうので、ズレるを超えて別の景色が目の前に現れることになる。

右スティックで画面が切り替わるイメージ

 ゲームを遊び慣れていて右スティックでの視点移動が指に染み付いている人ほど混乱する。本当に歩くだけで酔うのだ。立ち止まって見回すときは首をまわし、動いているときや方向転換をする時は真正面を向いて目をできるだけ動かさない。これでだいぶマシにはなると思う。この”酔う”というVR最大の弱点も、アイトラッキングなどの技術の進歩で解決してほしい。アクションゲームだけでなくVRChatなどのただ歩くだけのソフトでも酔ってしまうのは大問題だと思う。

 もちろん視点移動の設定を最適化すればかなり落ち着くのだが、ゲームで設定をイジるなんて発想は一般市民にはないオタクの発想だ。できればデフォルトで快適に遊べるようになると布教もしやすくなるというものだ。

それなりのスペースが必要

 ゲームのやり始めは気を使って小ぢんまりと手を動かしているのだが、熱中してくるとどうしても体が大きく動いてしまう。PCモニタ・ふすま・タンスなど、あらゆるものを殴ってしまう。家族からもひんしゅくを買うので、ある程度のスペースを確保しておくべきだ。

 Quest2の設定で立っているときと座っているときの”ガーディアン”という行動範囲の境界線を引くことができる。この範囲を超えそうになると画面に警告が出る。ガーディアンの外に出ると、パススルー機能により白黒で周囲のリアルの景色が映し出される。それでも殴る時は殴ってしまうので、周囲に人やモノがないことを確認して遊ぼう。

バッテリーの減りが速い

 VR機器の購入を検討しているときからバッテリーのヘリが速いことは把握していた。なので本体と同時に「BOBOVR M2 Plus Eliteストラップツインバッテリーコンボ」を購入した。装着感の向上プラス、バッテリーが2つ付いている優れものだ。ひとつ充電しながらひとつ使用で長時間遊べる。実際は私が予想していたよりもバッテリーの減りが速かったので、つくづくこれを買っておいて良かったなと思っている。バッテリーを後ろに付けることで本体とバランスが良くなり装着感が向上する。一石二鳥のストラップだ。

買ってないけどPICO4について語ってみる

 購入の直前までQuest2かPICO4で迷っていたので、PICO4についてもそれなりに情報は集めていた。Quest2を手に入れてしばらく使ってみて、改めてPICO4の本気度を感じることができた。多くのYou Tubeやブログで語られているPICO4のセールスポイントは、主にQuest2の弱点を潰した結果なのだと気づいた。

 まずはパンケーキレンズだ。これはQuest2で採用されているレンズよりもスイートスポットが広いらしい。あとカメラ近くに寄った顔などが見やすくなっているらしい。これはゲームよりも動画視聴で威力を発揮しそうだ。それと本体の重さと標準ストラップによる良好な装着感。PICO4は周辺機器を使わないノーマルな状態でもバランスや装着感が良いらしいのだ。周辺機器が多いのはQuest2の利点だが、コスト面を考えるとノーマルの状態で快適に使用できるのは嬉しい。

 PICO4では映画やライブ配信にチカラを入れている。無料で3D映画を観られたりアーティストのライブ配信を観られたりと動画コンテンツが充実している。アプリやゲームの量でQuest2と勝負するよりも、独自の動画コンテンツで本体の普及を目指しているようだ。たしかにゲームに興味のない層には、そっちのほうが魅力的にうつるだろう。ライブ配信からひとりでもスターが誕生すれば一気にユーザーが流入してくる可能性もある。

 PICO4では年末からキャンペーンによる3年の延長保証で新規購入層を狙っている。Quest2は保証が1年なのだが、1年を過ぎると有償での修理対応もしてくれないらしいのだ。それを考えると3年保証の魅力がじわじわと分かってくる。日本人はこういうところ重要視する。安心してモノを買えるということに価値をおいているのだ。こういう部分が最後の最後、購入の判断の後押しになったりする。

 他にも基本スペックはPICO4のほうが高いし1万近く値段も安い。PC接続のソフトも使い勝手がいいそうだ。そんなに難しいことをしなくてもSteamVRに接続できるのなら、ソフト不足というのも大した問題ではないだろう。どちらかというと気になるのは、バッテリー問題を解決する周辺機器があるのかどうかの方だと思う。1万くらいでバッテリー問題を解決する周辺機器があれば、Quest3が発売されると言われている年末に面白い勝負が見れるかもしれない。PICO4は家電量販店などで体験会をよく開催しており、自分の目でその魅力を確かめられる機会も多い。PICO4がどれだけQuestシリーズに食らいついていくのか私も楽しみだ。

VRに未来はあるのか

 VRやメタバースが面白くて刺激的なのは体験できた。QuestシリーズとPICO4のせめぎ合いも面白い。だが一般的にVRはまだまだ普及したとは言いがたい。私がブラックフライデーでQuest2を買ったと周囲に吹聴して回った結果、みんなそれなりに興味を持っていたことが分かった。だいたいは「本当に目の前に女の子がいるように見える?」という質問だったが。

 Metaの株価の急落で”メタバースは失敗した”という印象を持っていること。VR機器を装着した姿を人に見られたら恥ずかしいと思っていること。メタバースって何が楽しいのかいまいち分からないこと。ちょっと手を出すにしては値段が高いこと。体に直接触れるものなので中古で買いづらいこと。いろいろな要素があって興味はあっても買うまではいかない層が相当数いるのではないか。

 正月に親戚と集まったときに、「Wander」というグーグルマップを360°視点で楽しめるソフトで田舎にヴァーチャル墓参りをしたことを話したら予想外に反応が良かった。私もQuest2を買って驚いたのは、Wanderのような疑似体験ができるソフトの面白さだ。メタバースの中でも一番メタバースらしいVRChatも、疑似空間を歩いたり着せ替えを楽しんだりするその体験がやたら楽しい。

 一般的にはVRやメタバースというとゲームの種類という認識が多いと思う。とんでもない、旅行・ショッピング・コミュニケーション・疑似体験・教育など、陽キャ向けの文化こそメタバースで輝くのだ。外に出ていいのか悪いのかも判断が難しいこの時代だからこそ、メタバースのある生活を提案してゆくべきだと思う。

 VR酔いやコストやプレイ中の見た目など解決すべき問題は多い。しかしVRやメタバースに未来はあると私は思う。大好きなアーティストのライブに参加したり、遠く離れた友人たちと集まったり、ゆっくりと静かに仮想空間で過ごしたり、日々の生活のなかにそういったイベントを取り入れられるのだ。平日はメタバースでスキマ時間に遊んで休日は外へ出てリアルを楽しむ、なんていう生活が当たり前になってもおかしくない。

 私がこの世から去るときには、VRで大好きなキャラクターに囲まれて逝きたいと思っているので、そのへんの版権処理もクリアにしておいてください。お願いします。