[アニメ レビュー] 逃げ上手の若君 第二回 やさしいおじさん

逃げ上手の若君

 鎌倉幕府と後醍醐天皇の戦いは、元弘の乱における足利尊氏の裏切りにより、鎌倉幕府の滅亡というかたちでひとまず決着がついた。しかし、この物語の主人公となる時行だけは、諏訪頼重によってかくまわれ生き延びることができた。

 この物語は、敗戦によりすべてを失った北条時行が、得意な”逃げ上手”を武器に裏切り者である足利尊氏の討伐を目指す物語である。

 題材や時代背景などからとっつきにくい印象を受けるかもしれないが、ギャグと残虐が交互に押し寄せる刺激的なエンターテイメント作品になっている。キャラクターのデザインもかわいらしく、特に主人公の時行は男女ともに心を奪われる魅力を持っている。

 たびたび訪れる敵との戦闘も、知恵で乗り切る異能力バトルといった感じで、作画も素晴らしく万人が楽しめるものになっている。第二回はこの作品の見どころがギュッと詰まっているので、手っ取り早くこの作品の魅力に触れたい方にもオススメだ。

※本記事は2024年9月15日時点での視聴をもとにした記事です。


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第二回 やさしいおじさん

 第二回の長さは23分40秒(1420秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です

<登場人物>

北条 時行(ほうじょう ときゆき)
鎌倉幕府が滅亡した後、諏訪頼重に守られる北条家の御曹司。北条家の再興と足利尊氏を打つため諏訪大社に身を隠す。
諏訪 頼重(すわ よりしげ)
諏訪大社の御神体としても扱われる神官。後光を放ち未来を読む変態。未来の英雄となる時行を守るため諏訪にかくまい、その成長を手助けする。


やさしいおじさん

<ストーリーの流れ>

いまだ鎌倉を脱出できない時行たち

残酷な現実を知る時行

準備万端で宗繁を迎え討つ時行

自分のスタイルで宗繁に勝つ時行たち


背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。



起 (300秒)

 時行の兄・邦時は伯父の裏切りによって捕まった。時行もまた監視の目がゆるむまでの間、鎌倉へとどまることを余儀なくされた。伯父の悪魔のような顔と、それを打ち消してなお恐ろしい頼重の顔。残酷なシーンにギャグを持ってくるのは、この作品ならではのバランス感覚だ。


0-1:30
OP:「プランA」DISH// 90秒


1:30-2:00
時行の兄・邦時とふたりの伯父・五大院宗繁 30秒

2:00-2:45
邦時のおとりになる宗繁 45秒

2:45-3:05
宗繁の裏切り 20秒

3:05-4:10
悪夢にうなされる時行 65秒

4:10-4:30
監視の目がゆるむまで鎌倉を出られない 20秒

4:30-5:00
鎌倉に忠誠を誓ったはずの武士たちの裏切り 30秒

承 (320秒)

 あまりにデタラメな頼重を信用できない時行は、ひとり街へ飛び出した。しかしそこには受け入れがたい現実が待っていた。絶望のなか時行は頼重の未来視を頼りに、兄のかたき・宗繁のもとへと向かうのだった。


5:00-5:45
頼重には時行の未来が視えている 45秒

5:45-6:25
頼重をまったく信用できない時行 40秒

6:25-7:05
邦時が処刑されたという噂 40秒

7:05-8:25
事の顛末を聞いた時行 80秒

8:25-9:00
裏切りに次ぐ裏切りにまいってしまう時行 35秒

9:00-10:20
邦時のかたきを討つため宗繁のもとへ 80秒

転 (345秒)

 時行に邦時のかたきを討たせるため、頼重は時行の手足として弧次郎と亜也子を紹介する。覚悟も準備も整った時行は、宗繁をおびき寄せることに成功。時行の芝居に油断した宗繁だったが、間一髪で弧次郎と亜也子の攻撃をかわす。宗繁もまた武芸に秀でた武士であったのだ。


10:20-11:20
ターゲットを時行に切り替える宗繁 60秒

11:20-12:30
時行と共に戦ってくれる助っ人たち 70秒

12:30-13:00
武芸に秀でた弧次郎と亜也子 30秒

13:00-13:30
時行は弱いから守ってあげなくてはならない 30秒

13:30-14:30
宗繁を迎え討つ時行たち 60秒

14:30-15:00
時行を懐柔しようとたくらむ宗繁 30秒

15:00-16:05
そう簡単にはやられない宗繁 65秒

結 (360秒 + 95秒)

 武芸に秀でた弧次郎と亜也子といえども所詮は子ども。大人の熟練した武士である宗繁の相手ではなかった。しかし天性の逃げ上手である時行を目の当たりにした宗繁は次第に恐怖を感じ始める。このまま時行が逃げおおせたら、自分は確実に寝首をかかれる。あせりを感じ始めた宗繁は弧次郎と亜也子の攻撃に隙を作られ、ついに時行に討ち取られてしまうのだった。


16:05-17:00
大人と子どものチカラの差 55秒

17:00-18:00
追い詰められて興奮気味の時行の表情 60秒

18:00-19:00
天性の”逃げ上手” 60秒

19:00-19:45
戦乱の世を鬼ごっこで楽しむ主君 45秒

19:45-20:20
時行に恐怖を感じる宗繁 35秒

20:20-21:10
3人でつくる”勝ちパターン” 50秒

21:10-22:05
過去からの兄のエール 55秒


22:05
ED:「鎌倉STYLE」ぼっちぼろまる 90秒


シーンリプレイ

3:05-4:10
悪夢にうなされる時行 65秒

 現実の恐怖にうなされる、からの頼重の顔芸。ちょっとウザいが、回を重ねるごとに安心を感じさせてくれるシーンになる。


10:20-11:20
ターゲットを時行に切り替える宗繁 60秒

 どこまでもゲスな思考回路の宗繁。しかしその理論構築は正確だ。現代にも通ずるゲスと言えよう。


19:00-19:45
戦乱の世を鬼ごっこで楽しむ主君 45秒

 北条時行の人生から”逃げ上手”という個性に注目し、キャラクターとして成立させた原作者の発想はすごい。残酷な現実を楽しそうに逃げ回る姿は、爽快である意味恐ろしい。



感想

 裏切りによって絶望した時行。その反撃のスタートともなる宗繁の討伐を成功させる話だ。それは時行の才能を見抜いた頼重、そして時行をサポートする弧次郎と亜也子によって達成された。

 鎌倉幕府の滅亡という悲劇から始まるこの物語。時行に突きつけられた厳しい現実をキッチリ描いているのが印象的だ。頼重の底抜けな明るさやキャラクターデザインのかわいさは、世界観の厳しさとのバランスを取っているとも言えるだろう。

 残酷なシーンからギャグ、楽しい雰囲気から残酷なシーン、その緊張と緩和の落差は激しく、同じような特徴をもつ他作品と比べても際立ったものだ。それらが生み出すギャップのリズム。それが歴史ものという少し難解なイメージを持たれそうな題材から、視聴者の興味をつなぎ止める役割としても機能している。

 時行の命をねらう強敵たちの多くは超能力的な特技をもっており、怪物のような人物ばかり。今回の宗繁はただの優秀な武士で、この作品の中では普通の大人だ。この先とんでもない奴ばかり出てくるので、戦闘に関するお楽しみは盛りだくさんだ。

 彼らを迎え討つ時行の唯一の武器は逃げること。今回は逃げ続けることで宗繁に恐怖の感情を起こさせた。敵の能力が異能的であるのに比べて時行の能力は逃げることのみ。そこに作戦や仲間の協力があり勝利を掴む。

 飛び抜けた作画の良さもあり、意外性抜群の戦闘シーンからは目が離せない。史実にそいながらも異能バトルを頭脳的戦略で乗り切る面白さ。この爽快感を知ったらもう抜け出せない。たちまち作品のとりこになってしまうだろう。