[アニメ レビュー] 【推しの子】第2期 第17話 成長

【推しの子】第2期

 第1期では吉祥寺先生原作の「今日は甘口で」の実写ドラマを台無しにしてしまった鳴嶋メルト。「今日は甘口で」の最終回ではアクアに演技を引き出され役者として目覚めた。今回はそんなメルトの成長を描いた神回である。

※本記事は2024年8月13日時点での視聴をもとにした記事です。


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第17話 成長

 第17話の長さは25分30秒(1530秒)。独断で起承転結の4つに分割している。これ以降はネタバレ注意です

<登場人物>

鳴嶋 メルト(なるしま めると)
イケメンに産んでもらったため、楽勝な人生を歩んできた。「今日は甘口で」の失敗から役者としての意識に目覚める。


第17話 成長

<ストーリーの流れ>

2.5次元舞台「東京ブレイド」開幕

第一幕からキザミと匁の対決のある第二幕へ

実力派俳優の鴨志田と大根役者のメルト

会場を沸かせたメルトの魂の演技


背景色つき文字で書かれたシーンは、シーンリプレイ対象のシーンです。



起 (90秒 + 290秒)

 2.5次元の舞台をそのまま再現したパート。人物紹介とタイトルから主人公ブレイドとツルギの出会いまでを、まるで客席で観ているかのように楽しめる。今回のエピソード的にも東京ブレイド的にも「起」の部分となっている。


0-1:30
OP:「ファタール」GEMN(中島健人、キタニタツヤ) 90秒


1:30-2:20
2.5次元の舞台「東京ブレイド」のオープニング 50秒

2:20-2:40
ブレイド 姫川大輝 20秒

2:40-2:55
ツルギ 有馬かな 15秒

2:55-3:10
キザミ 鳴嶋メルト 15秒

3:10-3:20
匁 鴨志田朔夜 10秒

3:20-3:35
刀鬼 星野アクア 15秒

3:35-3:45
鞘姫 黒川あかね 10秒

3:45-4:10
東京ブレイド 25秒

4:10-4:45
ブレイドと名刀の出会い 35秒

4:45-5:10
ブレイドとツルギの出会い 25秒

5:10-5:55
ブレイドの王様宣言 45秒

5:55-6:20
ツルギを打ち負かすブレイド 25秒

承 (220秒)

「起」での人物紹介を踏まえたうえでのストーリー展開のパート。見せ場となる第二幕からのシーンまでを駆け足で描く。メルトの役であるキザミがブレイドの仲間になる点と、ブレイドがキザミのために渋谷の鬼退治に向かうという点がキチンと押さえられている。そしてメルトと鴨志田が役のうえでキザミと匁として対決するシーンへと移行する。


6:20-7:10
ブレイドとツルギの歩くシーン 50秒

7:10-7:50
キザミがブレイドの仲間になる 40秒

7:50-8:25
キザミたちのために渋谷の鬼退治を決意するブレイド 35秒

8:25-9:30
第一幕の終了 65秒

9:30-10:00
第二幕はキザミと匁の戦いから 30秒

転 (390秒)

 ここからは表舞台から一転して、キャラクターたちの舞台裏が描かれる。メルトを見下した態度をとる鴨志田は実力十分の役者。いっぽうでメルトは「今日は甘口で」の失敗から努力は続けているものの、役者としてはまだまだ。メルトの演技の下手さは明らかで、吉祥寺先生、観客、鴨志田、みんなのメルトへの評価はさんざんなものだ。ここでメルトの努力や悔しさを理解してあげられるのは視聴者だけ。とても感情移入してしまうパートだ。


10:00-10:40
鴨志田朔夜は女たらしで実力派の役者 40秒

10:40-11:30
劇団ララライを起用した雷田の思惑 50秒

11:30-11:50
鴨志田は2.5次元のお手本 20秒

11:50-12:30
メルトは実力ではなく鏑木のゴリ押し 40秒

12:30-13:10
鏑木はメルトのガムシャラさを買った 40秒

13:10-13:35
メルト起用の賛否は吉祥寺先生が判断してくれる 25秒

13:35-14:15
顔だけで楽勝人生を送ってきたメルト 40秒

14:15-14:50
メルトに批判的な吉祥寺先生と鴨志田 35秒

14:50-15:10
メルトは演技が下手な自覚はあった 20秒

15:10-15:45
できる努力はしてきたメルト 35秒

15:45-16:30
観客はメルトを下手だと思っている 45秒

結 (445秒 + 95秒)

 アクアの助言によって匁との対決シーンに魂を込めたメルト。見事に観客の心をつかみ最高の演技を披露した。「転」でメルトに感情移入した視聴者を熱狂させる演出。劇中でアクアが言う”エンタメの基本”とはまさにこのこと。メルトの努力や苦悩をみせられ、以前とのギャップにやられてしまった視聴者には、21:35からのアニメーション表現は何倍もの意味を持って解釈されたことだろう。お見事である。


16:30-17:25
一点豪華主義と客の油断 55秒

17:25-17:45
原作に忠実なアクロバティックな演技を披露するメルト 20秒

17:45-18:00
これにはアビ子先生も大喜び 15秒

18:00-18:30
観客の心は掴んだ 30秒

18:30-18:55
ここからがメルトの一番の見せ場 25秒

18:55-19:45
セリフを読むだけじゃ劇団ララライのレベルにはついていけない 50秒

19:45-20:05
メルトはあかねのように分析や考察はできない 20秒

20:05-21:00
自分はキザミと同じ気持ちだったことに気づいたメルト 55秒

21:00-21:35
メルトの人生をかけた1分間 35秒

21:35-22:40
メルトのすべて 65秒

22:40-23:20
静寂からの大喝采 40秒

23:20-23:35
鴨志田に認められたメルト 15秒

23:35-23:55
演技の楽しさに目覚めたメルト 20秒


23:55-25:30
ED:「Burning」羊文学 95秒


シーンリプレイ

6:20-7:10
ブレイドとツルギの歩くシーン 50秒

 アビ子先生とGOAさんが揉めていたシーンのひとつ。2.5次元の舞台転換なら説明セリフも自然な会話として話に溶け込む。


15:10-15:45
できる努力はしてきたメルト 35秒

 役者という職業に真剣に向き合うメルトを見て嬉しそうなかな。かなの演技への想いがメルトを変えるきっかけにもなったのだ。


21:35-22:40
メルトのすべて 65秒

 メルトの1分間にかける想いをアニメアートで表現したシーン。慢心、挫折、努力、涙、いろいろなものが表現されている。



感想

 今回は人生で誰もが犯してしまうミス”天狗になる”を体現したようなメルトが、苦悩しながら役者魂に目覚めるというストーリーだ。メルトのライバルたちは、自分が遊び呆けていた時間を演劇に費やしてきた猛者ばかり。一朝一夕では絶対に追いつけないギャップを、メルトは1分間という時間にかけることで埋めようとする。

 ここで重要なポイントはメルトが感じている劣等感と、キザミの感じている敗北感が重なっていることだ。彼を「東京ブレイド」にねじ込んだ鏑木は、今のメルトならキザミ役を演じ切れると見越したうえで彼をねじ込んだのではないだろうか。

 今回のシーンではないが、有馬かなは主役の姫川との食事にメルトを連れて行った。それは単にメルトがキザミ役だったからというだけでなく、「今日は甘口で」以来メルトがずっと走り込みを続けていることをかなが知ったから。役者として認めていたからとも考えられる。

 努力は人を裏切らない。少なくとも鏑木とかなは、メルトが踏み出した一歩を見逃さなかった。それはかなが過去に大きな挫折を経験していたからかもしれないし、きっと鏑木も同じように苦しんだ俳優たちをたくさん見てきたからかもしれない。とにかくこのふたりは、傷つきながらも小さな一歩を踏み出そうとするメルトの背中を押してくれたのだ。

 そして今回の大作戦の功労者アクア。目の前の演技に集中しすぎて視野の狭まったメルトに、一歩引いた視点からのアドバイスをくれた。演技が下手だという先入観を利用し、意表をついた演技で一気に観客のココロを引き寄せる。

 メルトはこのアドバイスによって、再現不可能なはずのアクロバティックな原作のアクションを舞台で再現してみせた。そのインパクトの効果は絶大で、「東京ブレイド」の原作者やファンを味方につけることに成功した。

 最後にダメ押ししたのは、ラスボス「今日は甘口で」の原作者・吉祥寺先生の涙だ。彼女は劇中において、ずっとメルトを冷ややかな目で見ていた。「今日は甘口で」の実写ドラマを台無しにしたメルトを許していなかったのだ。そして「東京ブレイド」におけるメルトの演技にも、やっぱり失望していた。

 でも最後には吉祥寺先生も涙を流して舞台を見つめていた。それは自分たちが魂を削って創り上げた作品を、メルトが魂を削って自分の情けない人生をさらけ出して役を演じてみせたからだ。演技の上手さではなく彼の感情の激流に心を動かされたのだ。

 すべてを出し切ったメルトは最高の笑顔で、役を演じることが楽しいとメルトに話した。それは何事にも真剣に向き合ってこなかったメルトがいろいろな人達に支えられながら、初めてぶち当たった人生の大きな壁を乗り越えた瞬間でもあったのだ。

 とにかく神回の多い作品だが、今回はひときわすがすがしく楽しい回であった。