[アニメ レビュー] 涼宮ハルヒの憂鬱(2009年放送版) 第28話 「サムデイ イン ザ レイン」
⇨To the English version of this article
涼宮ハルヒが踏み出した大きな一歩
2006年の4月から放映された「涼宮ハルヒの憂鬱」は日本におけるアニメの立ち位置を変えたと思う。少なくとも私の考えでは、1988年にアニメファンだけでなく「〇〇マニア」と別々にカテゴライズされていた人々の名称を「おたく」というある種の蔑称に十把一絡げに押し込め、ただ何かを好きなだけな個人を犯罪者のように扱われる原因を作った宮崎事件の鎖を断ち切り、世間における「おたく」という言葉の意味が少しはマシなものになる大きな一歩を踏み出せた要因の一つは「涼宮ハルヒの憂鬱」であったと思っている。
放映当初から話題にはなっていたものの、それを知見していたのはアニメファンやラノベファンと彼らに布教されたSFファンの一部だったと思う。涼宮ハルヒが爆発的に拡散されるのは動画サイトで「ハルヒダンス」が人気になったことが契機だったと思う。ハルヒダンスの動画はアニメを知らない人も踊ったり歌ったり集まったりと楽しい雰囲気をオタク文化に持ち込んだ。健康的すぎるとも思えるほどに楽しげに編集された動画群は「おたく」を縛っていた鎖を断ち切るとともに受け入れる社会側の壁も取り払った。これは特にインターネットを使える若年層で顕著だったと思う。
うまく時代に乗れたから成功できたのではあるが、もちろん「涼宮ハルヒの憂鬱」というコンテンツのクオリティあっての成功である。MAD動画やダンスから涼宮ハルヒを知ってアニメに入ってきた人を楽しませるクオリティが「涼宮ハルヒの憂鬱」にはあったのだ。アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」におけるアニメーションや作画の美しさは新規のファンを取り込みアニメ文化それ自体のイメージアップに繋がったと私は信じている。
劇場版のアニメ作品には世間で受け入れられているものも多くあるが、それはある意味「おたく」とは無縁の文化と受け取られていたからであったと推測する。一般からみて「おたく」の私としては以前よりもはるかに生きやすい世界を作ってくれた涼宮ハルヒ(京都アニメーションと言い換えてもいいかもしれない)にこそリスペクトを忘れたくないと思うのである。
※本記事は2020年12月17日時点での視聴をもとにした記事です。
第28話 「サムデイ イン ザ レイン」
第28話の長さは23分25秒(1405秒)。独断で全体を起承転結の4っつに分割している。
第28話ではSOS団の部室を中心に話が進む。登場人物を少し整理していれば理解がしやすいと思われる。
SOS団(S:世界を O:大いに盛り上げる S:涼宮ハルヒの団)部員たち
涼宮 ハルヒ(すずみや はるひ)
SOS団の団長。本作のヒロイン。非日常を求めていつも騒動を起こし皆を巻き込む。
キョン
主人公。いつもハルヒの騒動に巻き込まれる。ハルヒとはクラスが同じの同級生。
朝比奈 みくる(あさひな みくる)
ハルヒ達より年上の上級生。
長門 有希(ながと ゆき)
あまり喋らない。いつも読書をしている。
古泉 一樹(こいずみ いつき)
副団長。ハルヒのイエスマン。
その他の人物
鶴屋さん
みくるの友達。
谷口と国木田
キョンの同級生。
起 (122秒 + 238秒)
0-32
モノローグ 32秒
32-2:02
オープニングテーマ 90秒
2:02-2:42
部室 静寂 40秒
2:42-3:47
思い出の品々 65秒
3:47-4:01
ハルヒ登場 14秒
4:01- 4:25
ストーブ確保 24秒
4:25-5:40
ハルヒの押し付け 75秒
5:40-6:00
キョン出発 20秒
0から 寒い部室での話
32から いま見返しても綺麗なオープニング
2:02から ザ・放課後という感じ あるあるな環境音
2:42から 思い出の品を写しながらの振り返り
3:47から 唐突な出現それ自体がハルヒらしい 空気がガラッと変わる
4:01から あぐらかく→お茶のルーティン 普段からこんな感じなんだろう
4:25から カメラの位置 みくるの動き方 実写っぽい
5:40から みくると絡むのが気に入らないハルヒ
承 (240秒)
6:00-6:16
校舎を歩くキョン 16秒
6:16-6:50
みくるにせまるハルヒ 34秒
6:50-7:20
キョンの懸念 30秒
7:20-7:41
みくるの撮影(メイド服) 21秒
7:41-7:50
坂道を下るキョン 9秒
7:50-8:29
みくるの着せ替え(バニー) 39秒
8:29-8:35
駅で切符を買うキョン 6秒
8:35-9:09
バニーで撮影会 ナースに着替え 34秒
9:09-9:14
電車を待つキョン 5秒
9:14-9:50
ノリノリのハルヒ 36秒
9:50-10:00
駅に電車が到着 10秒
6:00から 画面奥へ歩く 去っていく背中
6:16から 背中を見送って振り返るハルヒ 2つの定点カメラ
6:50から 上手から奥へ移動
7:20から 当時としては珍しかった「萌え」を茶化したネタ
7:41から リアルタイム感が出る演出
7:50から ロッカーの定点カメラ 長門ちょっと邪魔
8:29から 駅まではお茶が冷めるくらいの時間がかかる
8:35から 前の着替えを踏まえての着替え 視聴者をおちょくる
9:09から キョン寒そう
9:14から ハルヒが楽しそうでなにより
9:50から 人が増えてるのでそこそこの時間を待ってた様子
転 (495秒)
10:00-10:06
一雨きそうですね 6秒
10:06-10:12
電車の中 6秒
10:12-10:40
着ぐるみ脱がす 28秒
10:40-11:38
ストーブ受け取り 58秒
11:38-13:54
本を読む長門 136秒
13:54-14:00
帰りの電車の中 6秒
14:00-15:00
引き続き本を読む長門 何かに気づく 60秒
15:00-15:40
帰宅中の谷口と国木田 雨が降り出す 40秒
15:40-16:00
キョンを心配するみくる 濡れながら帰るキョン 20秒
16:00-16:17
部室に鶴屋さん 指差す長門 17秒
16:17-16:26
坂を登るキョン 9秒
16:26-16:43
なぜか一緒に撮影に参加する鶴屋さん 17秒
16:43-16:47
部室で読書の長門 4秒
16:47-17:27
下駄箱で鶴屋さんと会話 部室へ帰る 40秒
17:27-17:46
長門だけ残った部室 19秒
17:46-18:15
体育館での撮影 29秒
10:00から 本題に入りますよという宣言
10:06から 2駅移動中
10:12から 長門はわざとやってると思う 今度は本取ってくれない
10:40から 世界はハルヒの思い通りになる 下手へはけるキョン
11:38から 長門以外はどっか行った ラジオとページめくりで画面を持たす
13:54から 通学時間も過ぎたから空いてる
14:00から 窓の外を見る→雨に気づいた
15:00から キョンとハルヒはセットで認識されている 雨が降り出す
15:40から 本降りになっちゃった
16:00から 鶴屋さんの勢いと理解力
16:17から よっこいしょ
16:26から わずかな登場でも魅力を発揮する鶴屋さん
16:43から 普段どおり過ごす長門
16:47から 下手から来て風のように去ってゆく鶴屋さん
17:27から 仕草だけで会話が成立する長門
17:46から 「萌え」を扱ったネタ ハルヒは運動神経がいい
結 (245秒 + 65秒)
18:15-19:00
ストーブの設置 あたたまって落ち着く 45秒
19:00-19:30
マブタがおりるキョン 30秒
19:30-20:00
長門とキョン 長門が立ち上がる 30秒
20:00-20:15
目が覚めるキョン うろたえるハルヒ 15秒
20:15-21:00
ハルヒが残っていた理由 カーディガンをハルヒに返す 45秒
21:00-21:30
もう一枚のカーディガン もう帰る 30秒
21:30-21:37
一本あれば充分 7秒
21:37-22:00
相合い傘で坂を下りる2人 ハルヒのいたずら 23秒
22:00-22:10
呆れるキョン 10秒
22:10-22:20
あっかんべー 10秒
22:20-23:25
エンディングテーマ 65秒
18:15から あたたまるまでの間の空気感
19:00から 眠たくなる感覚 わかるわー
19:30から さて、帰るか
20:00から 珍しいハルヒの表情
20:15から キョンが起きるのを待って一緒に帰りたかった
21:00から もちろん長門のやつ
21:30から 計画通り 目を合わせられない
21:37から さっきの道を今度は2人で 恋人ムーブ
22:00から ちょっと嬉しそう
22:10から 幸せな瞬間
22:20から 伝説のエンディング
外に向かって広がった涼宮ハルヒ
時代を作ったアニメといえば機動戦士ガンダムそれ以前は宇宙戦艦ヤマトだろう。90年代はエヴァンゲリオンで決まり。00年代はというと間違いなく涼宮ハルヒだろう。これらの時代を代表するアニメたちはいずれもSF作品である。その中でもハルヒは異質だと思う。
ハルヒ以外の作品はファンの数も多いし外国にも熱心なファンがいる。ハルヒももちろん人気があり外国にもファンが多いという印象はあるが他の作品に比べるとあっさりしたものだと感じる。ガンダムやエヴァは世界観の掘り下げやストーリーの考察が盛んでファンも濃い人が多い。内向きにどんどん濃度が上がっていく感じだ。新作がつくられるたびに議論が巻き起こりちょっとやそっとの知識では立ち入るのがはばかられる。
涼宮ハルヒはどうだろう?注目されたのはストーリーや世界観よりも現実世界で広がったムーブメントの方だったのではないか。ハルヒのキャラクターを題材にしたコスプレやダンスや歌ってみたの動画やイベント。みんなハルヒをアイコンにしてノリで繋がって楽しんでいた。アニメや小説の外にどんどん世界が広がっていった、それが涼宮ハルヒという現象だったのではないかと今は思う。現実に侵食してくるフィクションという意味でもやっぱり涼宮ハルヒはSF作品なのだ。
第28話は事件らしい事件は何も起こらない。ただの青春ドラマである。未来人も異世界人も宇宙人も活躍しないのだ。それでも各キャラクターの魅力は発揮されているし、視聴者に向けたメタ的なシーンも遊び心があって面白いと思う。この話は番外編なのでストーリー要素はあまりない。キャラクターの魅力にひかれた方はぜひ第1話から視聴して本編のストーリーも楽しんでほしい。